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自衛隊「対敵特殊部隊」訓練が非現実的な理由 特殊部隊が侵入できない日本の現実を考えていない

東洋経済オンライン / 2024年11月10日 9時30分

自衛隊は、特殊部隊対策で韓国の例をよく持ち出す。一時期、陸自が推進していたゲリラ・コマンド対策では北朝鮮工作員の侵入事件を挙げて必要性を強調していた。

ただ、韓国とは事情が違いすぎる。日本は同一民族の分断国家ではないし侵入容易な陸上国境もない。

日本社会の監視力を無視したもの

第2は、日本の治安維持力に封殺されることである。

演習の想定では、敵国の特殊部隊は基地外壁までは自由に移動できることになっている。武器に加えて、塀を乗り越えるための脚立や、フェンスの金網を切断するボルトカッター、基礎の下に抜け穴を掘るスコップほかの道具を公然と携えて接近できる設定だ。

これはあまりにも非現実的な与件設定だ。警察をはじめ、ほかの治安維持力を完全に無視している。

戦争となると、警察も全力警備を始める。「ノビ(窃盗)やタタキ(強盗)では国は滅びない」と他の業務をさしおいてでも全力で警備にあたる。

自衛隊基地を含む政府施設やインフラに警官を配置し、駅や港、道路の至るところに検問を設ける。ちなみに、警察官数は26万人で、陸海空の自衛隊員数22万人よりも多い。

よくできたもので、警備に全力投入しても何も困らない。戦時下は国民も緊張状態に入るので、治安は改善する。例えば、香川県は昭和16年(1941年)末の太平洋戦争開戦から半年間は犯罪件数がゼロだった。

加えて、国民による強力な相互監視も始まる。日本はムラ社会であり、不審者には敏感だ。非常時には勝手に監視を始める。これはコロナ流行時に自然発生した、他県ナンバー狩りが示すとおりだ。

この状況で、敵国の特殊部隊は自由な活動ができるだろうか。不審な荷物をもつ4人連れ、5人連れが鉄道や道路にある検問や監視をすり抜けて自衛隊基地まで到達するだろうか。

不可能だ。少しでも違和感があれば通報され検査となる。そこで荷物を改められれば一巻の終わりだ。

武器で押し通すのも無理である。たしかにその場は突破できるかもしれない。ただ、いずれは自衛隊や警察に囲まれる。いずれにせよ任務達成は不可能となるのである。

第3は、攻撃対象を基地にすることは不適切だからである。それからすれば襲撃はない。

基地は攻撃対象にならない

その理由は、まず攻撃目標としての優先度が低い問題がある。特殊部隊が狙うのは攻撃効果が高い目標、つまり戦争全体を有利にできる、または日本全体に影響を及ぼせる目標である。例えば、首相官邸やアメリカ大使館がよい目標であり、原子力発電所や静岡県の富士川橋梁群のような交通網の収束部だ。

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