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自衛隊「対敵特殊部隊」訓練が非現実的な理由 特殊部隊が侵入できない日本の現実を考えていない

東洋経済オンライン / 2024年11月10日 9時30分

基地は攻撃対象として魅力的ではないといってもよい。日本全体に影響は及ぼせない。しかも、自衛隊の戦闘力もあまり削げない。うまくいって5、6機の飛行機を破壊できるくらいがいいところだ。

次に、警備が厳重なため、成功の見込みが立たないことである。第2で述べたように外から警察、自衛隊の警衛、基地内の警戒員、さらに護衛艦に至っては出入り口で舷門当直も警戒している。そのすべてを潜り抜けるのは難しい。しかも、攻守いずれかが1発でも発砲すれば1キロメートル四方の警官や自衛官が押し寄せてくる。

そもそも、戦時には護衛艦や戦闘機には近づけない。まず護衛艦や潜水艦は海に出す。戦闘機も仮設土木機材で作る防空壕に仕舞ったうえで、鉄条網をめぐらして警戒員を配置する。自衛隊でもそれくらいの知恵はある。

最後に、損害が許容範囲を超える問題がある。基地襲撃となれば特殊部隊でも全滅必至となる。

果たして敵国は基地襲撃で特殊部隊を使い潰すだろうか。手間をかけて集めたうえで、苦労して日本に潜入させた貴重な兵員を成功の見込みが立たない作戦に使うだろうか。

それよりも確実な作戦に使う。破壊工作なら山奥にある送電線の鉄塔のボルトを抜いて倒すような地道な活動である。自衛隊基地を狙うとしても侵入はしない。

深夜に1キロメートルほど離れた場所からライフルを射掛ける。それにより被害確認や警備警戒となり、基地総員を夜中に叩き起こす嫌がらせである。

あるいは、スパイや扇動に転用するかだ。日本社会で自由自在に動き回れる貴重な人材である。戦闘に使うよりも、普段の情報収集や不満分子の扇動、反体制運動への援助に使ったほうがよい。敵国はそのようにも考える。

破壊工作の目的も、破壊ではなく負担増大である。警察の検問強化で交通や輸送を停滞させる。さらには、それにより日本経済の効率も落とす。自衛隊に後方警備を強要する。それにより前線に送り込む戦力を減らす。また隊員を疲労させて航空機や艦艇の可動率を落とす。

それが特殊部隊本来の用途である。もともと直接的な戦果をあげるための戦力ではない。潜水艦と同様に、敵国に後方警備を強要して戦力分散を図る戦力なのだ。

レンジャーの侵入もやめたほうがよい

敵国の特殊部隊は自衛隊基地には来ない、そう判断できる。それからすれば、今の自隊警備は過剰すぎる。警備を実施することで、本来の基地機能の発揮が損なわれる事態は間違えている。現実的にありうる事態に焦点を合わせ、それに充分に対処できる水準まで切り下げるべきだ。

とくに、警備過熱の原因となる勝負形式の演習はやめたほうがよい。現状からすれば、陸自レンジャーも勝つことにこだわりすぎている。

そのために演習でしか通用しない、非現実的もいいところの極端な、エクストリーム手法での侵入を図っている。それを続けても双方ともに訓練としての利益は生まないからである。

文谷 数重:軍事ライター

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