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1日20万本の「うなぎパイ」が作られる圧巻の光景 生地は手作り!師範制度で技術を継承していく

東洋経済オンライン / 2024年11月12日 9時20分

うなぎパイのサクサクした食感は、生地の層と油脂の層をバランスよく重ねることで生まれる。生地に練り込む砂糖の量も、生地の状態に合わせて手の感覚で調整している。

「生地作りはとても難しく、ひと通りできるようになるだけでも3カ月はかかります。さらに細かな技術も含めると、完全に習得するまでに3~5年はかかります」(清瀧さん)

一方、機械化が進められている工程もある。機械化の中でも苦労したのが、うなぎパイをロボットアームでハンドリングする工程だという。うなぎパイは非常に繊細なお菓子であるため、何回も試行錯誤を重ね、実用化まで1年を要した。

ちなみに2014年に竣工した浜北工場では、完全自動化した専用ラインでうなぎパイ ミニを製造している。

全自動化に踏み切ったのは、生産効率の向上と、より衛生的な環境を確保したいという背景からだ。パッケージ(包装)の完成度向上、人件費削減、ロス削減など、結果的に全自動化されていなかった大久保工場と比較して、約40%の生産性向上につながった。

また、取り外しやすい部品の採用や、清掃スペースを大きく確保するなど、清掃しやすいような工夫も取り入れたことで、清掃時間を約40%短縮することもできた。

「職人による伝統的な技術と機械によるメリットをうまく組み合わせながら、安心安全でおいしいうなぎパイの生産を目指しています」(清瀧さん)。

1件500円で改善提案の買い取りも

このほか従業員が日々作業をする中で、さまざまな効率化案や改善点も浮かび上がってくる。そこで、現場で働く従業員からの意見を吸い上げるために、改善提案制度や表彰制度を活用している。1件あたり500円で改善提案の買い取りをしているというのもユニークだ。

ただ、中には正式に提案するほどでは……とためらう人も多い。そこに着目した間宮さんは2023年からプチミーティングを導入。月に1度10~15分、仕事での気づきやたわいのない会話をする。

このミーティングの中に出てくる意見にも重要な改善のチャンスが潜んでいる。こうした密なコミュニケーションが影響してか、退職率の低下にもつながった。

「部活動としてeスポーツを行ったり、うなぎパイ職人の砂糖ぴったり計量チャレンジを行ってみたり、業務の中に遊びを取り入れつつ、コミュニケーションのきっかけにもなればと思っています」(間宮さん)

食をテーマにした施設を数々展開

春華堂では、うなぎパイファクトリーのほかにも、スイーツバンクやnicoeなど、「食」をテーマにした施設を運営している。2024年11月8日には、東京都渋谷区の東急プラザ原宿「ハラカド」に、クリエイティブレストラン「HOW‘z」をオープンした。

全国の生産者に会いに行き、厳選した素材と老舗菓子屋として培ってきた職人の手技が光るオリジナルのお土産菓子や、クリエイターとコラボした食器類などの限定グッズも楽しめるそうだ。

今後の課題は、うなぎパイ以外の柱となる商品を育てていくことと、海外からの工場見学や各施設に足を運んでもらう機会を増やすこと。実現すればきっと、さらなるうなぎのぼりの飛躍にもつながりそうだ。

【そのほかの写真を見る】生地をつくり、窯で焼き上げてから、秘伝のたれを塗る…。工場内部で「うなぎパイ」ができる様子。

丹羽 桃子:工場見学マニア・ライター

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