茶室をリノベし自分空間に、アラ還男性の理想郷 旅立つ前に夫が20歳下妻に贈った「終の棲家」
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 8時20分
50代。人生、そろそろ「B面」へ! どこに住む? どう生きる? セカンドライフを思いきり楽しむための自分本位の家づくりを多面的に紹介。実例を多数掲載!
建築家の湯山重行氏の著書『人気建築家と考える50代からの家』より一部抜粋、編集してお届けします。
80歳の愛する夫に快適な住まいを
「急ぎで60ハウス(ロクマルハウス)を建ててほしい」と連絡をいただいたのは、60代のTさんという女性からであった。
「60ハウス」とは拙著『60歳で家を建てる』で提案した、60歳の夫婦がコンパクトに暮らすのにちょうどいい平屋のことだ。書店で見かけ、読了後、夫と2人で住むなら平屋がいいと決断したらしい。
早速現地確認に向かう。
【写真を見る(5枚)】Tさん夫妻の住む60ハウス、Sさんがリノベした茶室の写真は、こちらからご覧いただけます。
ご夫婦の住まいは、かなり以前に購入した中古住宅で、公道から階段を20段下がった場所にあった。窪地なので日中でも、あまり陽が当たらない。ちょっと部屋の内部も傷んでいる。
打ち合わせは、ずっと妻であるTさんだけの参加だった。
何度目かのとき打ち明けられたのは、「実は主人は84歳と高齢で、現在は入院中なのです。退院後はおそらく足が思うように動かなくなるので、外階段の上り下りができなくなる可能性が高いでしょう」とのこと。
たまたま夫が所有する雑木林があり、伐採して駐車場にしたばかり。海沿いで陽もよく当たる場所だったことから、そちらにバリアフリー住宅を建てれば解決するのではないかと考えたそう。
夫からは「好きにしていいよ」
コンパクトな平屋はバリアフリー化するのに最適だ。
建築費は当時で2500万円ほど。貯蓄でなんとか工面できる金額だったため、夫からは「あなたの好きなようにしていいよ」とGOサインが出た。こうして超特急で設計を進め、工務店さんにも最速でどうにか頼む!と、見積もりをしてもらった。
数カ月後、建築請負契約の締結のため、仮退院されたTさんのご主人にお会いした。
契約のサインをいただいたあと、少しだけ雑談をする時間があったが、聞けばお2人には子どもはなく、事実婚とのこと。話すほどに夫からTさんへのこれまでの感謝の気持ちが自然と伝わってきた。
工事は自分史上最速で進んだ。
完成した「60ハウス」は、勾配天井がリビングからバルコニーまでつながる開放的な空間が特徴だ。
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