玉木氏の不倫騒動が「国民民主の躍進」に繋がる訳 「不倫しない無能より不倫する有能」ムードの背景
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 8時30分
後者のポピュリズムは、前掲書によれば、自らが「人民」を直接代表すると主張して正統化し、広く支持の獲得を試みる、「人民」重視の裏返しとしてのエリート批判、「カリスマ的リーダー」の存在、イデオロギーにおける「薄さ」に特徴がある。
その点を踏まえて、筆者は、「103万円の壁」の見直しを事実上のシングルイシュー(単一論点)政策として掲げ、「固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴え」つつ、「人民」重視の裏返しとしての(政策に反対する、あるいは疑問視する)メディアや政党などに対する批判を展開していく絶妙なスタンスと評した。
つまり、ポピュリズムの2つのタイプをうまく組み合わせた「ハイブリッド型のポピュリズム」を実践していると考えたのである。なぜなら、後者のポピュリズムにおける「エリート批判」と「カリスマ的リーダー」という要素が弱いことにより、急進化する傾向が比較的抑制されると推測されるからだ。
実際、国民民主党は「政策優先」で、政権交代のような「政党優先」の立場を取らないことを表明しており、玉木氏の「政権の延命に協力しない」発言は好意的に受け止められた。そういう意味で「ソフトなポピュリズム」と言い換えることができる。
不倫騒動がポピュリズムを加速させる
だが、今回の騒動は、後者のポピュリズムに付きものの「敵対勢力」「既得権益」からの攻撃や裏工作のようなものと認識され、むしろ玉木代表や国民民主党の支持層の結束を強めることになるかもしれない。
当たり前だが、明確な証拠がない限りは陰謀論の域を出ない。けれども、直近の国政選挙で急伸した党の代表、しかも国民生活に直結する減税などの実現を左右する重要な人物が、首相指名選挙直前のタイミングで「不倫報道がなされた」という事実だけで十分なのだ。
すでに田中真紀子元外相は、不倫報道についてある情報番組で「やっぱりマスコミと、政界の反玉木か知らないですけど、反国民(民主)か、そういう癒着がえらく分かりやすく出てきて」などとコメントしているが、同様の思考はX上に溢れ返っている。
「玉木潰し」「国民民主党潰し」「露骨な財務省の陰謀」と書かれた投稿に数十万ないし数百万単位のインプレッションが表示されている。
「出る杭は打たれる」――同党に降りかかるスキャンダルは、旧態依然とした体制に固執し続ける守旧派の悪だくみの疑いが濃厚であり、そうでなくても彼らはそれを最大限利用して信頼を失墜させようとする――という善と悪の闘争の物語に火をつけるのだ。
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