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玉木氏の不倫騒動が「国民民主の躍進」に繋がる訳 「不倫しない無能より不倫する有能」ムードの背景

東洋経済オンライン / 2024年11月13日 8時30分

国際政治学者のP・W・シンガーとアメリカ外交問題評議会客員研究員のエマーソン・T・ブルッキングは、SNSの「注目争奪戦」において、物語が定着するかどうかを決定するのは「シンプルさ」「共鳴」「目新しさ」の3つだと述べた(『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』小林由香利訳、NHK出版)。

「政治家、ポップスター、ヘイト集団、反ヘイト集団の誰であれ、『物語』を自分のものとし、観察者の感情を呼び込み、信憑性を与え、その結果コミュニティを構築できた者が新たな勝利者となる」と。

しかし、これは自分から注目に値する事件を積極的に作り出していくような自作自演の側面が強い。今回の騒動は、予期せぬスキャンダルによって結果的に「物語の新たな一章」が紡がれたところに大きな違いがある。

ネット上では、スピーディな謝罪会見の開催と謝罪の潔さを評価する声が意外にも多く、SNSでは動画とともにシェアされるなどしている。

また、前述したように善と悪の闘争の物語として人々の興味を呼び起こす起爆剤となりつつある。これもシンガー=ブルッキング的な「物語」に人々を巻き込んでいく感情の動員となり得る。

そして、それはポピュリズムと非常に相性がいい。選挙後、国民民主党の公認キャラクター「こくみんうさぎ」のぬいぐるみの売り切れが続出したように、アテンション・エコノミー(注目経済)は、出来事そのものの評価などお構いなしに予想外のムーブメントを引き起こすのである。

とは言え、消去法的な支持者も少なくない

もちろん、それでも国民民主党に期待が集まるのは、現実的な消去法でしかない面もある。

「失われた30年」どころか「失われた40年」に向かって、日本を地の底に引きずり込むかもしれない自公連立政権もトラウマだが、かつて公約にない消費増税を強行した野田佳彦代表率いる立憲民主党もトラウマである。

要は、与党にも野党にも「庶民の声」が届いていないと多くの国民が感じているのだ。ならば、政治家の資質についても、私生活上の問題よりも「政策優先」で判断するのは合理的といえるだろう。

そもそも政治家も人間なのだから、聖人君子を求めるほうがどうかしている。世界的に見ても、日本のような不倫報道による謝罪文化は異様である。

では、不倫バッシングと有名人の社会的な抹殺にいい加減嫌気が差し、ほどよいリアリズムへの転換を表しているのかといえば、それはまったく違うだろう。

現在起こっているのは、「なるだけ早期に自らの非を認めて、誠意を込めて謝罪する」という、いかにも日本的な禊(みそぎ)の儀式を経た上での受容に過ぎないからだ。

魅力的な物語、ゆえに注意が必要だ

ポピュリズムを含めた政治的な熱狂は、わたしたちの日々の不安と不満の表れである。それゆえ、善と悪の闘争の物語はエンターテインメントとしても魅力的であり、ついつい感情の動員に無防備になりやすい。

だが、今やこのアテンション(注目)なくしては新興政党の支持が広がらないのもまた事実なのである。何が正しくて何が間違っているのか。

わたしたちにとってこの自問自答は瞬間瞬間に生まれては消えるものであると同時に、いつ終わるとも知れない長い道のりの始まりでもあるのだ。

真鍋 厚:評論家、著述家

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