トランプは威信を懸けてウクライナを停戦させる 「威信」こそがアメリカファーストの根幹だ
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 15時0分
国際社会の建前やイデオロギーだけでは、もう解決は不可能なほど、現実の状況は変化している。すでにEU国民の多くは、この戦争により、多大な不利益を被っている。ロシアからのエネルギー供給が断たれたことによる経済的打撃は大きい。EU諸国の経済は衰退し、国家の赤字も増大している。
現状を変えたいという民意
国民の視線で見ると、不可解としかいいようがない。「タタールのくびき」「ロシア人は野蛮」といった19世紀に使われたイデオロギー的プロパガンダなども、最近では通用しなくなってきている。
また、ウクライナがその軍事力と領土を失っていることを、政府の息がかかった大手メディアも、国民に隠すことができなくなっているからだ。こうした事実が、今年の西側諸国の選挙の結果に結びついたといえる。
日本に関しては、直接の影響はないが、ウクライナ問題から生じた台湾や朝鮮半島の緊迫化という問題がある。防衛力の増大が、かえって緊張を増幅させているのではないかという懸念を持つ国民も多い。石破茂首相のアジア版NATOを懸念する国民が多いのも事実である。
アメリカでは、トランプの大勝利に終わったが、その勝利は大統領選だけにとどまらず、下院、上院、州知事にまで及び、民主党の強硬な外交路線が完全に拒否された形だ。
アメリカは財政赤字、武器援助、移民問題など、すべてにおいて未曾有の状況である。それがアメリカ国民をじわりじわりと疲弊させている。貧富の格差がここまで広がれば、1人当たりのGDP(国内総生産)所得の優劣を競いあっても、ほとんど意味がない。ごく一部の者の利益で1人当たりの所得が上昇しているだけであり、一般大衆はインフレと失業、低賃金で苦しんでいる。
こうした問題をうまく利用したのが、トランプであることは間違いない。
カマラ・ハリスは、トランプの中にこの問題の解決を期待する選挙民の心をつかむことはできなかった。要するに選挙は、カマラ・ハリスの選挙ではなく、バイデン政権と民主党への信任を問う選挙だったのだ。
トランプが移民制限、国内景気上昇とアメリカ第1主義を掲げた以上、ウクライナやガザなどに関わっている暇はない。またNATOに関わっている暇もないだろう。しかし、そのためにもアメリカの威信だけは失いたくない。
アメリカ経済は、アメリカの威信という裏付けがあって初めて成り立っているのである。そうである以上、ウクライナ戦争を早期に解決し、威信(軍事、経済、政治における力)を見せたいところである。
アメリカの威信死守=アメリカ第1主義
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