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佐々木朗希のMLB移籍、大谷翔平との決定的な違い システムの問題だけではない「認められる」条件

東洋経済オンライン / 2024年11月13日 8時40分

佐々木朗希サイドが、今年の移籍に固執する背景には、何らかの「約束事」があったのだろうか。ロッテがポスティングでの移籍を認める前から、MLBの情報筋が「佐々木朗希のメジャー挑戦」を報じていたから、MLB球団との下交渉のようなものがあったのかもしれない。移籍が決まる前に選手と球団が裏で交渉するのは、タンパリング(協定違反の交渉)とされるから、明確なものではなかったのだろうが、佐々木側に「今年移籍しなければならない事情」があったのか、と推測される。

NPBからMLBに移籍した投手の多くは、MLBの過酷な環境下で故障している。松坂大輔、和田毅、ダルビッシュ有、田中将大、前田健太、そして大谷翔平と、NPBで「エース」と呼ばれた投手は、MLB移籍後に投げる腕のひじのじん帯を損傷している。そして田中を除いて「右ひじ側副靱帯再建手術=トミー・ジョン手術」を受けて長期間、戦線離脱を余儀なくされている。

彼らはNPB時代何度も規定投球回数をクリアし、シーズン通してフル回転した経験を有していた。それでもMLBでは故障してトミー・ジョン手術を受けているのだ。

NPBで一度も規定投球回数に達したことがない佐々木が、アメリカのさらに過酷な環境に適応して活躍できるかどうかは、微妙なところだ。

今オフ、ダルビッシュ有は古巣日本ハムの選手たちに会うために、エスコンフィールドHOKKAIDOに姿を現した。そして昔のチームメイトと練習に汗を流した。移籍して12年経っても「古巣」と良好な関係が維持できるのは、日本ハムを円満な形で移籍したからだ。大谷翔平も同様で、エスコンフィールドには2人の顔を描いた大きな壁画が描かれ、ファンの撮影スポットになっている。

「佐々木の肉声」がほとんど聞こえてこない

ロッテ球団は「佐々木の夢をかなえるために喜んで送り出したい」とは言ったが、今後、佐々木はロッテ球団に「古巣」として、気楽に帰ってこられるような関係になるのだろうか?

筆者が最も気になるのは、今回の移籍劇に際して「佐々木の肉声」がほとんど聞こえてこないことだ。野茂英雄からイチロー、松井秀喜、大谷翔平まで、メジャーに挑戦するトップ選手は力強い言葉で「自分の考え」「自分の意志」を明確に述べた。

「誰に言われたから」でもなく「自分自身の選択」としてこの道を選んだとはっきり口にした。今後、MLB球団による争奪戦が始まるが、佐々木はどこかのタイミングで「自分の言葉」で移籍について語る必要があると思う。

広尾 晃:ライター

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