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離婚数減少でも「熟年離婚」が減らない3つの理由 「死後離婚」件数も高水準、妻たちの本音は?

東洋経済オンライン / 2024年11月14日 7時40分

医学部入試における女性差別対策や同性婚訴訟弁護団などでジェンダー差別事件を手がけてきた佐藤倫子弁護士は、熟年離婚が減らない理由、要素を3つ挙げる。

1つ目は、定年退職後、一日中家にいる夫に耐えられない妻だ。

「もともと支配的かつ家父長的価値観の夫が、歳を重ねるにつれて気が短くなっている。キレる夫に耐えられなくなった妻が、熟年離婚を決断する」(佐藤弁護士)

別れを切り出すタイミングは、定年退職後数年以内が多いという。

「仕事だけをやり、友達も趣味も持たずにきた夫が、定年退職後、24時間家にいる。不機嫌で、妻に指図をし、時に怒鳴りつける──。こんな状態が続き、夫の気配を感じただけで動悸がするという状態に至ることがある。短気になるのは男性更年期なども考えられるとはいえ、もともとのモラルハラスメント気質、根底にある家父長制感覚を直すのは容易ではない。妻に出ていかれて自殺を図ろうとする夫もいるが、それも『おまえのせいで死んでやる』と脅して妻をコントロールし続けようとする精神的暴力といえる」(同)

2つ目は、「精神的DV」が社会に認知されたことによる影響だ。

「一昔前なら、弁護士に相談しても『結婚なんてそんなもの』『殴る蹴るでなければ離婚できない』と言われて諦めた妻も多かった。離婚できるようになったのは、精神的DVやモラハラという言葉が社会で認知されるようになったから。新聞の切り抜きを持って『これ、私のことだと思うのです』と相談に来る妻もいた。子どもたちが『いいかげんお父さんと別れなよ。同居を続けるなら、お母さんに孫を見せに行けないよ』などと離婚を後押しするケースも目立つ」(同)

スマホによる意識変革

意識変革の背景には、スマートフォンの普及により、妻たちがネットで情報収集できる環境が整ったこともあると思われる。

60代のスマホ所有率は2015年に33%だったところ2020年には69%、2023年には93%に達した。高齢者もSNSを利用し、動画コンテンツを視聴できる時代になった。

例えば夫の不貞で悩む妻は、「サレ妻」で検索すると大量の経験談を見つけられる。「サレ妻」同士の離婚ノウハウ交換も活発だ。

司法制度改革で、弁護士法人もマーケティングに力を入れるようになった。夫の不貞や離婚の相談など、悩みを抱える妻たちが法的なアプローチをしやすくなったのも、この10年の変化だ。

そして3つ目、最後の一押しが「妻の収入」だ。

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