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音大卒42歳女性が「手取り12万円」で苦しむワケ【再配信】 コンビニで働き、プロのオペラ歌手を目指した

東洋経済オンライン / 2024年11月14日 19時0分

必死に働いて上位生徒に追いつくために課外レッスンを受けても、上位生徒は江美子さんが働いている間に練習をしている。やっとお金を作って課外レッスンを受けても、その間に上位生徒は留学に行っている。差は広がるばかりで、江美子さんの成績は上がるどころか下がった。だんだんと精神が病んでいった。

「まわりと自分を比べて、自分が誰だかわからなくなった。大学2年生以降になると点数と順位が出る。自分はこの位置にいるってわかって、才能があったり、優秀な子は先生に可愛がられる。けど、そうじゃない子は相手にされない。そんな現実を受け入れられなかった。オペラ歌手になりたくて大学に行って、こんな実力しかないって現実と理想との折り合いがつかなくなった。それでおかしくなった」

教授に相談に行ったら…

どうして成績が伸びないのか、実力がつかないのか。悩みが限界に達したとき、担当教授に相談に行った。実技の授業“作曲者の気持ちを掴め”という意味がどうしてもわからなかった。教授はオペラ界で知られる中年男性で、厳しい指導で有名だった。

「教授に裸になれって言われて、服を脱いでカラダを触られた。このことを誰かに言ったら、お前を退学にさせるって言われました。脱げって言われて脱ぐしかなくて、その人はオペラ界に顔が利く。大学生だから噂でも鵜呑みにしちゃう。どうしてもオペラ界に入りたかったから従うしかなかった」

この事件は江美子さんのトラウマとなっていた。このときの情景が「今でも夢にでてきます」と言っている。教授のしたことはセクハラでアカハラだが、彼女は教授の目的がセクハラなのか、指導なのか、わからない段階で出ていってしまっている。

事件以降、教授は江美子さんをいっさい気に掛けなくなった。大学で肩身が狭くなり、途中で放棄してしまったので教授の真意もわからない。全裸にさせられたのは、セクハラではなく、本当は指導だったのかもしれないと混乱した。成績が上がらないだけでなく、大学での居場所もなくなって、深く悩んでいるうちに精神的な負担が大きくなった。

この頃、江美子さんは大学の学科違いの同級生と恋愛をしていた。入学してしばらくして付き合うようになって、大学1年の秋から相手の家で一緒に暮らしていた。2年になって成績上位が望めなく、大学での居場所もなくなって、心の拠り所は恋人しかなくなった。恋人と恋愛にどんどん依存した。

「恋愛で本格的に精神がおかしくなりました。境界性人格障害の症状がだんだんと出始めて、彼と喧嘩が多くなった。ずっと彼と一緒にいたいと思うようになった。喧嘩ばかりしながら、こっちを見てほしいみたいな。彼の気を引くようにオーバードーズしたりお酒をたくさん飲んだりして、そういう行動が激しくなった」

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