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音大卒42歳女性が「手取り12万円」で苦しむワケ【再配信】 コンビニで働き、プロのオペラ歌手を目指した

東洋経済オンライン / 2024年11月14日 19時0分

自殺未遂をしたのは、完全に行き詰まった大学3年の夏だった。

教授に見放され、恋人を失った

「彼の帰りが遅くなって咎めた。毎日、毎日、喧嘩になって、自殺を図りました。血圧があまりに高くなって、市内の総合病院で1週間入院した。彼の心をつなぎとめたかった。派手なことを起こして心配してほしかった。入院中に彼から、そんなことをしても自分の気持ちは離れたってメールがきました。私もその現実を受け入れて別れるしかなくなって、実家に帰りました」

大学生になってオペラ歌手になる夢を実現させるためには、才能や実家の太さが必要という現実に気づいた。それはどんな努力をしても、どうにもならなかった。依存した恋人とうまくいかなくなり、希死念慮が生まれたのと、恋人にもっと心配してほしい気持ちが重なって大量に薬を飲んだ。

自殺未遂したことで精神科を受診した。境界性人格障害とうつの併発と診断された。夢に向かって頑張ったことで超えられない格差を知って、担当教授に見放され、恋人を失った。残ったのは壊れてしまった自分自身だけだった。

「プロになるには大学卒業して、大学院に行ってオペラ団体に入るのが一般的なコースでした。そこで優秀だって認められた人だけが団体の会員になって、契約を結ぶ感じです。大学卒業しても、大学院か養成所に通わなきゃいけない。養成所も大学院も入学金とか学費がすごく高い。家族会議をして、オペラはやめることになった。夢は潰えて就職活動をしました。でも、何社受けても全部落ちました。エントリーシートすら通らなかった」

就職を決意しても、どこの会社からも内定はもらえなかった。夢を諦めて普通に働くという方向転換も許されなかった。卒業後、アルバイトを続けながらオペラ団体の研究生になった。そこでも自分なりに頑張ったが、35歳になっても準団員にすら昇格できなかった。一方、同級生だった成績最上位だった令嬢は、プロになって華やかな舞台に立っている。比べてはいけないとわかっていても、比べてしまう。苦しかった。

実家の子ども部屋にいつまでも住んでいるのは、両親に申し訳ない。でも、自立をしたくても非正規雇用の収入は安い。とても一人暮らしを支えられる収入は得ることはできない。歌手にも正社員にもなれないならば、結婚をしようと思ったこともある。ずっと誰か現れないか願っていたが、誰も現れなかった。35歳のときにすべてを諦めて、団体の研究生も辞めた。

「音楽しかない人間になってしまった」

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