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音大卒42歳女性が「手取り12万円」で苦しむワケ【再配信】 コンビニで働き、プロのオペラ歌手を目指した

東洋経済オンライン / 2024年11月14日 19時0分

「私はずっと夢見ているのだと思う。オペラ界には未練はなくなったけど、それと同時に音大に入ったことに対する後悔が生まれた。オペラにかかわったすべてが間違っていたというか、そういう後悔がある。できればやり直したい」

江美子さんは唇を噛みながら、そう言いだした。プロの歌手になれるのは本当に一握りだけであり、十分に想像できる結末である。しかし、在学中に精神疾患になり、就職活動に失敗して、誰かと結婚することもできなかった。人生の分岐点、方向転換のチャンスをすべて逃している。諦めた夢に中途半端にしがみつくしかできないまま42歳を迎えている。

「音楽をまだ続けているのは、それしかないから。音楽しかない人間になってしまった。後悔しているか、していないかっていえば、大学に入ったことは後悔している。夢なんか見ないで、高卒でそのまま就職すれば、こんなことにはならなかった。そうすればきっと普通の人生を送れたのにって」

江美子さんの望む普通の人生とは健康で正社員として働いて、女性の平均賃金程度を稼ぎ、親に頼ることなく自立することである。「その大きな壁は乗り越えられそうにありません。情けないけど、40歳をすぎて普通に生きることも諦めつつあります。だから後悔ばかり」という。

いまは月3万円の月謝を払って、ボサノバのボーカルとギター教室に通っている。江美子さんは生徒のなかでは、圧倒的な音楽知識と技術があり、先日の発表会ではトリを務めた。音楽って楽しい、初めてそう思うことができたが、“私の人生、こんなはずじゃなかった”というモヤがかった心の中の憂鬱は晴れないままだ。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。(外部配信先では問い合わせフォームに入れない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご確認ください)

中村 淳彦:ノンフィクションライター

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