「膀胱がん余命1年宣告」から開き直りがん共存記 尿が腎臓に逆流、まずは腎機能の回復を最優先
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 9時40分
2024年春、ジャーナリストの山田稔(64)さんに膀胱がんが発覚、肺にも転移しており、ステージ4でした。医師が語る病状説明を淡々と受け入れ、がんとの共存の道を選択した山田さんは、抗がん剤治療を経て10月に膀胱の全摘出手術を受けました。本連載(今回が初回)では、がんと向き合う日々を記します。
好きだった酒が飲めなくなった
2024年春。明らかに身体に異変が起きていた。1月の会合を機に、酒がまったく飲めなくなった。ビールをグラス1杯飲んだだけで気持ち悪くなり、受け付けないのである。日本酒もダメ、ウイスキーもダメ、梅酒もダメだった。連日、夜中まで飲み歩いていた夕刊紙の記者時代が嘘のようだ。
2月中旬以降、頻尿が襲うようになった。最初は3時間に1回ほどだったのが、2時間に1回、1時間に1回という具合に深刻化。時折、血尿が混じる。
もはや耐えられないと、3月に入り居住地域の泌尿器専門のクリニックを訪れた。その時はまだ「前立腺肥大か、最悪の場合は前立腺がんか」といった思いで受診した。
問診から下半身のエコー検査に進み、「後で血液検査を行いましょう」という医師の声にも「前立腺」との思いは消えなかった。
ところが事態は一変した。しばらくして再び診察室に呼ばれた。そこで医師が口を開いた。
「膀胱に大きな物体が映っています。残念ながら腫瘍の可能性が高いですね。血液検査どころではありません。一刻も早く大病院で詳しい検査を受けてください」
「前立腺肥大」なんて甘い幻想はたちどころに消え去った。医師は3つの病院を示し、その中から選んでほしいと言う。自宅から一番近い大学病院を選んだ。医師はさっそく紹介状を書いてくれ、すぐに連絡して行くようにと念を押した。
帰宅後、もやもやした頭を整理しようとパソコンで膀胱がんのことを調べる。クリニックの医師は「浸潤している(膀胱の壁にどれだけ深く及んでいるか、深達度によって筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性がんに分類される)とは限りませんから」と何度も言ってくれたが、エコーで見た限り腫瘍はかなり大きかった。これは覚悟したほうがよさそうだ。
さっそく大学病院に連絡し、3月13日に診察を受けることになった。この日の診察の流れが次の通り。
紹介状チェック→問診→内視鏡による膀胱診断→採血→CT撮影→レントゲン撮影→心電図撮影→輸血(診断後)
医師の診断内容は?
ひと通りの診察が終わって、担当医師は、診察室でこちらの顔をじっと見て診断内容を伝えてきた。
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