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工房職人の技「金子眼鏡」高級ブランド化への軌跡 低価格チェーン隆盛の中で"逸品"を訴求

東洋経済オンライン / 2024年11月17日 7時30分

「当社とは違う形のファッション訴求をしていたと思いますが、1975年にオリジナルフレームを製作するなど、同社代表の白山將視(しらやま・まさみ)氏は憧れの存在でした」(金子真也社長)

1980年前後のメンズ雑誌をひもとくと白山眼鏡店の存在感が目立つ。メガネ好きには昔から知られた同店だが、金子真也社長はこんな因縁を明かす。

「実は当社(JEH)のもうひとつの代表ブランド『フォーナインズ』(999.9)の創業者・三瓶哲男は、白山眼鏡店に勤務して手腕を発揮しました。その後、仲間と一緒にフォーナインズを立ち上げたのですが、その世界観には白山を感じさせるような一面もあります」(同)

フォーナインズは2021年にJEHの傘下に入ったが、金子眼鏡とは別の路線でハイブランド訴求をしている。

低価格チェーンが台頭する中で

1990年代以降のメガネ業界は、安価な中国製品が大量に流入し、低価格で訴求するチェーン店が存在感を高めていった。例えば「JINS」ブランドを展開するジンズホールディングスは、2001年にメガネ業界に参入後、成長を続けている。

技術を持った職人が廃業する時代だったが、金子眼鏡は会社を訪ねてきた職人・山本泰八郎氏の腕を見込み、「泰八郎謹製」(セルロイド製)を発表。その後、「井戸多美男作」など“職人シリーズ”のメガネを展開している。一連の取り組みでブランドに骨太さも加わった。

「2010年頃までは企画からプロデュース、生産、販売に至るまですべて自分で決めていたのですが、現在は取締役の伊藤琢磨に商品企画や開発を任せています。私が担うのは店舗デザインで、出店立地の選定から外観や店内の世界観、商品の見せ方などを決めています」(金子真也社長)

メガネの市場規模は約4000億円、「アイウェア」(眼鏡・コンタクト・補正器具等)で約5000億円といわれる。一般的なメガネの平均価格帯は調査データによって異なるが、例えば「約2万8000円」(2023年6月総務省統計局小売物価統計調査)となっている。

「実態として、この20年ほどは平均客単価が下がり、顧客数は増えているが金額ベースの市場規模は縮小している」というのが金子真也社長の見解だ。

人口の多い団塊ジュニアが老眼世代に入り、メガネ人口はさらに拡大するといわれる。それでも「金額ベースの市場規模が縮小」するのは、着せ替え感覚で何本も所有するため、低価格のメガネを求める消費者が増えたこともあるだろう。

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