仏教に学ぶ「家族との距離感」を整理する心得3つ 年齢を重ねれば当然、関係性も変わってくる
東洋経済オンライン / 2024年11月17日 18時0分
「心おだやかでいたいと願う人を導く仏教において、執着は、それを邪魔する(乱す) 煩悩として扱われます」。そう語る元結不動密蔵院住職の名取芳彦氏は、同時にまた「老年を迎える頃になると、かつては大切にしていたものの中にも、もう必要のないものが出てきます」とも指摘します。
そんな名取氏が仏教の視点から説く、年齢とともに変わってくる「近しい人との距離」の取り方とは。
※本稿は、名取氏の著書『60歳を過ぎたら面倒ごとの9割は手放す 我慢してばかりの人生から自由になる54の教え』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
お互いを認め合う独立国家のような関係に
夫は外で働いて生活費を稼ぎ、妻は家庭をしっかり守る良妻賢母。そんな夫婦のイメージは、今は昔の話です。
【イラストで見る】依存せず、割り切りすぎない「新しい夫婦の形」
経済も家事も対等だったり、婚姻という法律に縛られないパートナーのような関係だったりする若い世代の夫婦関係を見て、「これまでの自分たちとは違う夫婦の形もありかもしれない」と思うことがあるでしょう。
とはいえ、私は、何十年も連れそった夫婦に、まったく別の、新しい夫婦の形を提案するつもりはありません。今までの夫婦の関係を、少しだけ変化させてみてはどうかと思うのです。
その土台になるのは、"自分だけ働いてきた""自分だけ家事をしてきた"という自己犠牲の思いを捨て、"あなたのおかげで働けた""家事に専念できた"という感謝の心で過ごすこと。これがないと、犬も食わないケンカがはじまります。
江戸時代の侠客、上州館林の大前田英五郎は「ケンカというのは、どちらに理屈があろうと、バカを看板しているようなものだ」と言ったとされますが、自己犠牲のアピール合戦が、この言葉を絵にしたようなドタバタ劇を生むことは、私も何度も経験しています。
夫婦のどちらかが相手に依存したり、強権的になったりしないで、それぞれが相手の主権を認める独立国家のような関係を目指すこと、その独立国家同士が貿易をすると考えること、それが私の考える夫婦じまいです。
貿易の基本は、相手にないものを自分が持っていること、相手がしないことを自分がすることです。「料理は作るから、お風呂掃除は頼んだわよ」「私は買い物に出かけるから、洗濯物は取りこんでおいて」など、お互いのやること、時間、居場所などを交換すれば、良好な貿易関係が成立します。
もう1つ大切なのは、同じ時間、同じ空間を共有する努力を怠らないこと。仏教では、何かしら相手との共通項に気づくことから、慈悲(やさしさ)が生まれると説きます。私もその通りだと思います。「あなたはあなた、私は私」と割りきってしまうと、やさしさが発生しないのです。
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