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「セブン&アイ」創業家の巨額買収を実現する"秘策" 常識的には難しい巨額MBOの突破口を考える

東洋経済オンライン / 2024年11月17日 10時0分

(撮影:今井康一)

セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)が11月13日、創業家からのMBOによる買収提案を受けたと発表しました。

【写真】「白馬の騎士」となりうるのはどこか

セブン&アイはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(以下、ACT)からの買収提案を受けていて、今回の創業家からの買収提案はその防衛策だと考えられます。

このMBOが仮に実現するとなると買収総額はACTからの買収提案と同規模以上、つまり7兆円を超える規模になるはずです。過去に日本企業として例のないほどのこの巨額買収計画にリアリティはあるのでしょうか?

常識的には難しいMBO

発表を受けてのメディア報道での専門家の意見はおおむね、このMBOは実現が難しいというものです。ただ、戦略の専門家の視点で申し上げると、創業家にはおそらく、常識的には難しいMBOを成立させる秘策が用意されているように思います。

今回の巨額買収、何が難しいのか? そしてどこに突破口があるのか? それぞれわかりやすく解説してみたいと思います。

最初に、現在進行形で起きている買収提案のそもそもの始まりからお話しします。

ここ数年、セブン&アイは企業価値の向上が遅れていました。株主から見れば成長性の高いグローバルなコンビニ分野に経営資源を集中させてほしいのですが、経営陣は不振の西武そごう百貨店の売却やイトーヨーカドー再建など、緊急性を要する経営課題に向き合う時間が増えていました。それで物言う株主からの提案が増加していたのです。

昨年、ようやく西武そごう売却が実現したところですが、時価総額は4.6兆円程度と好調な日本株の中ではあまりぱっとしない動きを見せていました。そこにカナダのACT社が6兆円規模での買収提案を持ちかけたのです。

買収提案後に株価が急上昇した理由

今年8月にセブン&アイが買収提案を受けている事実を公表すると、株価は急上昇します。理由は2つあって、ひとつは経営陣から独立する取締役会メンバーが買収可否を検討することから株主にとってよい買収提案であれば受け入れざるをえないだろうという観測があったこと。

そしてもうひとつがその際に、取締役会が納得するための交渉で買収金額がさらに引き上げられることになるだろうという観測です。8月時点では、専門家の間で買収実現の確率は五分五分で、どちらに転がるかわからないという意見が有力でした。

その後、セブン&アイは「企業価値を著しく過小評価している」という理由で買収提案を拒否した結果、ACT社が9月に7兆円規模に買収提案額を引き上げました。そしておそらくこの後、拒否が続けば8兆円規模あたりまでは再々度の買収提案が続くだろうと見られていました。

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