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最低賃金引き上げが「日本人の給与増」に必要な訳 恩恵受けるのは最低賃金で働く人だけではない

東洋経済オンライン / 2024年11月18日 8時0分

2019年、正規労働者の平均時給がほぼ2400円(ボーナス含む)だったのに対し、パートタイム労働者の平均時給はわずか1100円(女性)と1200円(男性)だった。2010年代には、非正規は全従業員の4割近くに達していた。

正規と非正規の賃金がまったく変わらなかったとしても、非正規が増えるだけで平均は下がるという算段だ。それだけではない。非正規雇用を増やすと、雇用主は正規雇用に対する交渉力を強め、その結果、賃金が抑制される。

これにより、2009年から2019年にかけて、正社員の実質賃金はほぼ横ばい(上昇率は2%未満)にとどまっている。非正規労働者の実質賃金は8%上昇したが、これは主に最低賃金の上昇によるものである。

また、同じような動きによって、すべてのフルタイム労働者、さらには男性フルタイム正規労働者の賃金も押し下げられている。これは女性に対する賃金差別が原因である。平均的な女性フルタイム労働者の賃金は男性より25%低い。

2013年から2024年にかけて、企業は男性正社員の数をわずか3%(わずか47万人)しか増やさなかった。一方、女性正社員は26%(267万人)増加した。

フルタイムの男性正社員でさえ、このような賃金差別によって賃金が抑制されていることに気づいている。2000年から2019年まで、彼らの実質時給は横ばいだった(19年間で合計わずか0.6%の上昇)。

企業は、男性正社員を低賃金の正社員に置き換えるという脅しを利用して、賃金の引き下げ圧力をかけてきた。利益を上げている企業は簡単に大量解雇に踏み切れないが、大手コングロマリットは男性正社員を賃金の安い子会社に送り込むことができる。

終身雇用の知られざる「弊害」

最後に、日本の終身雇用制度という要因がある。終身雇用制度は正社員に雇用の安定をもたらす一方で、より高い賃金を求めて他の企業に移ることを妨げることによって、労働者の交渉力を抑制している。

企業が優秀な労働者を確保するために競争しなければならない国では、賃金は高くなる。ポジティブな兆候の1つは、若年で高度な技能を持つ労働者の労働移動が増加し、彼らの賃金が改善していることである。

最低賃金の引き上げについては、政治的意志があれば日本も大きな一歩を踏み出せることを証明している。今こそ、同一労働同一賃金の実施から労働移動の阻害要因の除去まで、すべての労働者の実質賃金を引き上げるために必要な他の措置を講じる時である。日本の労働者が自分の作ったものを買えるようにならない限り、日本経済は回復などありえない。

リチャード・カッツ:東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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