ハワイ「ABCストア」誕生の裏にある日系人の物語 日焼けのキティちゃんなどグッズが人気に
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 9時0分
コササ家のファミリービジネスの歴史は、戦前の1917年にまでさかのぼる。岡山県から農園労働のため移民でハワイに渡った1世のモリタ・コササさんとミツエさん夫妻が始めた「M. KOSASA商店」にルーツがある。
元は「小笹(おざさ)」だったが、客が呼びやすいように「KOSASA(コササ)」に名字を改めたという。缶詰やパン、米などの食料品から雑貨、灯油、氷など生活に必要なものを仕入れて販売し、次第に店は繁盛するようになった。
当時のハワイには、さまざまな国や地域からやってきた貧しい出稼ぎ移民であふれていた。
「移り住んだ当初は皆ほとんどお金を持っていなかった。福祉も最低賃金も、何もない。家族が暮らしていくには、知恵が必要だった。驚くべきことに、多くの日本人移民はとても機知に富んでいた。友人や親戚のネットワークを利用して、食卓に食べ物を並べた。住居を見つけることもできた。だれかが米袋を手に入れたら、みんなで分けようと言った。それが自然だった」
モリタさん・ミツエさん夫妻は、近所の人や従業員と家族のように接し、住まいのない人には寝床や職を提供した。卸業者には支払い期日の約束を守り、品物の代金を支払う余裕のない人には、払えるようになるまでいつまでも待ったのだという。
「引退したある牧師が私に話してくれたことがある。住まいも食べ物もなく困っていたときに、祖父母が『それならうちで暮らそう』と言ってくれたと。彼が自立できるようになったとき、祖父母の寛大さを決して忘れることはなかった。彼らはみんな日本人で、互いに助け合うことでネットワークを築いてきたのだと思う」とポールさんは振り返る。
そんな両親のもと、息子・シドニーさん(ポールさんの父親)は幼い頃から家業の手伝いをして育ち、いずれ商店を継ぐものだと考えていた。だが、母親は、高校生になったシドニーさんに「食料品店よりも稼げるから、薬剤師になってドラッグストアを始めたらどうか」とアドバイスを送った。
母親の勧め通り、シドニーさんはカリフォルニアの大学の薬学部へ進学した。1940年前後、現地ではアジア人に対する差別的偏見があり、入学枠を得ることも住居を探すことも容易ではなかった時代だ。
そんな中、大学4年だった1941年12月8日(日本時間)、日本軍がハワイの真珠湾を攻撃し、第2次世界大戦が勃発する。大統領令のもと、ほかの日系人とともにトゥーリーレイク強制収容所に送られることになったが、大学の学部長の判断で日系人学生の前倒しの卒業が認められ、収容所で卒業証書を受け取ることができたという。
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