「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路を走る「電車のようなバス」
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 6時30分
ただ、検討会の委員を務めた板谷和也・流通経済大学教授によれば、「今回は鉄軌道系の導入がそもそも可能かどうかを議論しているので、バス等のほかの交通機関との比較などは、その次の段階での検討になるということだったと記憶している」と振り返る。「つまり、鉄軌道系の導入は可能であるという今回の報告書の結論をもってそのまま鉄軌道系を導入するということにつながるわけではない」ということだ。この点については、県が住民に対してしっかりと説明すべきだったと思う。
LRT反対派の多くが、LRTに代わる交通手段として電気自動車(EV)バスを推す。LRT同様に環境負荷が軽減されるほか、LRT導入時に伴う大規模な工事の必要がなく整備費用が少なくて済むからだ。しかし、県はEVバスによるメリットは認めつつも、EVバスでは来訪者コントロールが難しいという点を課題に挙げていた。
ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)は、富士山について「人が多いため来訪者のコントロールが必要」と指摘している。
EVバスでは一般車両を規制できないため、スバルラインにLRTの軌道を敷設して、緊急時を除きマイカーや大型バスが乗り入れないようにすることで来訪者コントロールを実現したいと県は考えている。長野県の上高地のようにマイカー規制と観光バス規制を行っている道路もあるが、「富士スバルラインは現行の法規制では現状以上の規制強化が難しい」というのが県の言い分だ。
LRTには技術的な課題が多く、EVバスでは来訪者コントロールができない。最適解はあるのか。県が探っているなかで新たに浮上したのが、ART(Autonomous Rail Rapid Transit)という新たな交通モードである。
その仕組みについては高木聡氏の2024年2月24日付記事(『LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か』)に詳しいが、一言で表せばLRTとバスの性格を併せ持つ交通手段。見かけはLRTだが、鉄輪で軌道上を走るのではなく、ゴムタイヤで道路上を走る。日本でもよく見かける連節バスがLRTの形をしているといえばわかりやすいだろうか。
今年9月24~27日にドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」では、中国の鉄道車両メーカー中国中車(CRRC)のグループ会社が開発したARTが公開された。来訪者の関心はARTの隣に展示された最高時速200kmの水素燃料電池で走る高速列車に向いていたが、CRRCは都市と都市を結ぶ中・長距離の高速移動は水素列車、都市内移動はARTと二本立てで売りこんでいた。つまり、ARTは高速水素燃料電池列車並みのインパクトがあるとCRRCは踏んでいる。
ART、メーカー担当者が「太鼓判」
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