日本を「創造的破壊」ができない国にした「方針」 いま最も必要な「天才シュンペーター」の思想
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 10時30分
例えば、社会学者のフレッド・ブロックも、シュンペーターの主著『資本主義・社会主義・民主主義』について、こう述べている。
七十五年後に、シュンペーターの『資本主義・社会主義・民主主義』に立ち戻ることは、骨董いじりなどではまったくない。その反対に、現代の我々が置かれた政治経済状況を理解しようとする者にとっては、決定的に重要なことである。
ブロックは、2013年に、『ニュー・リパブリック』誌の「イノベーションに関する最も重要な3人の思想家」にも選ばれた研究者である。
ちなみに、フレッドと並んで選出されたマリアナ・マッツカートもまた、シュンペーターの流れを汲むイノベーションの研究者であり、彼女は、ヨーロッパや日本の産業政策に大きな影響を与えている。ちなみに、マッツカートは、ラゾニックと共同研究も行っている。
なお、来年から、アメリカは、ドナルド・トランプが大統領となるが、そのトランプが国務長官に起用するとされるマルコ・ルビオ上院議員は、産業政策の熱心な推進者として知られる。 そのルビオは、2019年に発表した『21世紀のアメリカの投資』 というレポートの中で、ラゾニックとマッツカートの研究に言及しつつ、株主価値最大化を目指す経営はイノベーティブではないと強く批判したのである。
このように、シュンペーターの著作は、現代のイノベーション研究のみならず、各国の産業政策にも、インスピレーションを与え続けているのだ。
「コーポレート・ガバナンス」改革への警告
ところで、日本は、1990年代以降、ラゾニックが批判したアメリカの「コーポレート・ガバナンス」改革を理想視し、模倣し続けてきた。その流れは、2010年代の安倍政権の下で加速した。ちょうど、アメリカでラゾニックの業績に対する評価が高まっていた頃である。
ちなみに、1999年5月、ラゾニックは、経済同友会が東京で主催した企業システム改革のカンファレンスにおいて、講演を行っている。当時の日本は、デフレ不況で苦しむ中、アメリカから株主価値最大化のイデオロギーを持ち込み、それまでの日本的経営を破壊して、「コーポレート・ガバナンス」改革を始めようとしていた。そんな日本に対して、ラゾニックは、警告を発した。
日本の企業経営者と公共政策の担当者は、株主価値の最大化を追求するコーポレート・ガバナンス体制と、経済全体の持続可能な繁栄との関係については、アメリカにおいてすらも、議論の余地が大いにあることを認識すべきである。(Lazonick, W., 'The Japanese economy and corporate reform: What path to sustainable prosperity?',Industrial and Corporate Change, 8 (4), 1999, pp. 625-6.)
この記事に関連するニュース
-
Beatrust (ビートラスト)、生成AIを活用したスキルサーチ機能「Beatrust Scout(スカウト)」と「Tag Extraction(タグ抽出機能)」を提供開始
PR TIMES / 2024年11月14日 14時45分
-
企業価値を最大化する中堅上場企業向けIR支援サービス「Innovation Polaris」リリース
PR TIMES / 2024年11月14日 12時15分
-
「 大和ハウスグループDXアニュアルレポート2024」公開(ニュースレター)
PR TIMES / 2024年10月30日 15時45分
-
日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)
東洋経済オンライン / 2024年10月29日 10時30分
-
倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)
東洋経済オンライン / 2024年10月23日 10時40分
ランキング
-
1「石を投げても許される」という差別 「弱者男性」は推計1500万人
毎日新聞 / 2024年11月19日 10時0分
-
2兵庫知事選、斎藤氏の支持“急拡大”…何が? Xフォロワー数3倍 「報道と別の姿」「戦うイメージ」拡散か【#みんなのギモン】
日テレNEWS NNN / 2024年11月19日 9時39分
-
3もはやオオカミ少年化している「円安メリット」 円安効果の過大評価がポピュリズム化を招く
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 7時30分
-
4玉木雄一郎氏よ、ありがとう…あなたのおかげで政治家にとって"本当に大切なもの"が明らかになりました
プレジデントオンライン / 2024年11月19日 7時15分
-
5前池田町長に有罪判決=加重収賄罪など―岐阜地裁
時事通信 / 2024年11月19日 11時43分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください