「自信過剰な人」をリーダーにするのは進化のせい 「大言壮語」を信じがちな人類のやっかいな傾向
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 12時0分
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
自信ありげなミーアキャット
なぜ自信過剰な上司が多いのかという謎には、ミーアキャットが意外な光を与えてくれるかもしれない。
【写真でみる】なぜ政治家は堕落し、職場にサイコパスがはびこるのか? 進化論や人類学、心理学によって読み解く1冊
マングース科のミーアキャットは、緩やかな群れを成して食べ物を探し回る。次の食事を求めてカラハリ砂漠をさまよう。
だが彼らは、行き場所をどうやって決めるのか? 科学者は、彼らが「ムーブ・コール」を発声できることを発見した。彼らがその「コール」を発するとき、メッセージは明快で、出発する時が来た、ということだ。
ムーブ・コールは無視されることもあるし、そのコールをきっかけに移動が始まることもある。なぜ違いが出るのか?
科学者たちは次々に実験を行い、奇妙なことを突き止めた。誰がそのコールを発したかは関係なかった。社会的な階級も無関係だった。肝心なのは、ムーブ・コールを発しているミーアキャットがどれだけ自信ありげに見えるか、だった。
自信が大切なのは採用面接のときだけではない。ミーアキャットたちにとっても重要なのだ。
アフリカの野生の犬にはムーブ・コールはない。その代わり、群れの1頭が猟に出たくなると、くしゃみをする。ミーアキャットとは違い、くしゃみをした犬の地位が大切だ。
もし支配的な野生の犬がくしゃみをすると、あと1、2頭がくしゃみをして同意をするだけで、群れは狩りに出掛ける。だが、下位の犬が自分の思いを通したければ、10頭ほどの犬にいっしょにくしゃみをしてもらう必要がある。
人間は事実上、ミーアキャットと野生の犬の両方を合わせた振る舞いを見せる。階級が物を言うが、自信も重要だ。
私たちは階級制で自分の上にいる者に従うが、自信のある人には――自信過剰の人にさえ――もっと従う傾向がある。確信の持てない状況で確信を見せる者がいれば、私たちは心をつかまれる。
自信過剰さは生存に有利だった
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