「社員のために尽くす会社」だけが生き残る理由 優れたリーダーに必要な「私たち」という視点
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 11時0分
総合地球環境学研究所所長で霊長類学者の山極壽一氏は、リーダーは、「I=私」ではなく、「We=私たち」という視線で考えるべきであり、「個人が組織のために尽くせ」ではなく、「組織が個人のために尽くす」という理念が必要な時代となると言います(写真:Ran&Ran/PIXTA)
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。
メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、霊長類学者の山極壽一氏に話を聞いた。4回にわたってお届けする(第1回はこちら)。
人間だけが演劇を楽しめる理由
僕自身、「ダンバー数」にあたる150人規模の集団を「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」と言い換えて提言してきました。
【写真で見る】5, 15, 50, 150・・・・・・ この数字に秘められた「すごい力」がわかる本
「ダンバー数」は、言葉ができるより前にあったものです(前回の記事を参照)。これは、メンタライジングという知能、つまり社会認知能力のことです。
サルの社会認知能力は「レベル1」で、自分と相手の間の力関係を推し量ることしかできません。
「レベル2」になると、相手の考えていること、相手が自分をどう評価しているのかを理解できます。
人間は「レベル5」まで達します。「レベル2」までのときは、自分と相手との関係しかありませんが、「レベル4」では、第3者が自分と相手の関係をどう読んでいるのかを予想して行動するようになります。さらに「レベル5」になると、第5者の視点が入ります。
人間に最も近いチンパンジーは、演劇を見ても楽しむことができませんが、我々は楽しむことができます。それは、社会認知能力を「レベル5」まで上げながら見ることができるからです。
自分が傍観者であっても、いろんな登場人物を見て、その心の中にどんなことを描いて行動しているのかを理解できる。そして、この能力がなければ、複雑な社会を生きていけません。
人間の脳は、大きさそのものは12~16歳ぐらいで完成しますが、社会認知能力が発達するのは、それ以降で、25歳ぐらいまではレベルアップしていきます。
つまり、大学を出たぐらいの年齢でも、まだ完成していないのです。
この社会認知能力の話は、実は『「組織と人数」の絶対法則』の中心でもあります。
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