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北海道から九州まで「ローカル私鉄気動車」の記憶 戦前生まれや「バスそっくり」など個性派ぞろい

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 6時30分

うれしいのは、この鉄道が映画『男はつらいよ 柴又慕情』(1972年)のタイトルバックに登場したことである。荷台の付いた「バケットカー」の気動車、キハ2に乗り込む寅さんがこの鉄道を全国にアピールした。

近畿地方のレアな気動車たち

近畿地方にも個性的な非電化私鉄がいくつもあった。京都府の丹後地方にあった加悦鉄道は、重要文化財に指定された1873年英国製の2号機関車(123号機関車)が有名だが、現役時代の気動車も貴重な車両が揃っていた。同鉄道の顔的な存在だったのがキハ08 3(元国鉄キハ08形)で、1960年にオハ62形客車を改造してつくられた気動車である。国鉄で廃車後、1971年に加悦鉄道に転じ、1985年の廃止まで活躍した。

和歌山県にあったミニ私鉄、有田鉄道でもほかでは見られない気動車が活躍していた。国鉄キハ58形の両運転台版といえるキハ58003だ。電化私鉄の富士急行(現・富士山麓電気鉄道)が1962年に、当時気動車での運転だった中央本線の急行「アルプス」に併結して新宿に直通する急行運転のために導入した車両だった。同線は2002年に廃線となった。

一方、同じ和歌山県の紀勢線沿線にある現役のミニ私鉄、紀州鉄道も他社からの珍しい譲渡車が走っていた。長らく主力だったキハ600形は元大分交通耶馬渓線(大分県、1975年廃止)の気動車。同線廃止後に紀州鉄道に転じ、2009年10月まで走り続けた。現在は商店街の一角に保存されている。

中国地方では同和鉱業片上鉄道(岡山県)が思い出深い。柵原鉱山で産出される硫化鉄鉱を片上港まで輸送する鉄道で、1991年に廃線となった。旅客輸送は機関車牽引の客車列車が、その車体色から「ブルートレイン」として知られていたが、晩年の気動車では1953年製の自社発注車キハ312の活躍が目立った。片上鉄道は「柵原ふれあい鉱山公園」に多くの車両が保存されており、往年の姿をしのぶことができる。

南国情緒たっぷりのローカル線

九州は、現在は第三セクターを除けば非電化私鉄は島原鉄道(長崎県)のみとなっているが、かつては大分交通や鹿児島交通などの非電化ローカル私鉄があった。筆者がたびたび訪れていたのは、現役当時日本最南端の私鉄路線だった鹿児島交通枕崎線(鹿児島県)だ。枕崎―伊集院間49.6kmを結んだ同線は1914年に南薩鉄道として開業。「南薩線」として親しまれたが、1983年6月の豪雨災害で一部不通となり、翌1984年3月18日に全線廃止となった悲運の鉄道である。

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