「人の脳年齢は1日眠らないだけで老化」は"真実" 「神経細胞は一度死んだら戻らない」は実はウソ
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 15時30分
「寝ても疲れがとれない」「眠りが浅い」など、睡眠に関する悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。今はタイパ、コスパが極端に重視される時代ですが、精神科医で、早稲田大学睡眠研究所所長の西多昌規さんは、「人生で眠っている時間は決して無駄な時間ではない」と断言します。
本稿では、しっかり寝ることがどれほど大事なことなのかについて、西多さんの著書『眠っている間に体の中で何が起こっているか』より一部抜粋、3回にわたって紹介します。
何歳でもニューロンは新生する
赤ちゃんの睡眠時間の半分は、レム睡眠です。成長にしたがってレム睡眠は減少し、大人では全睡眠時間の20~25%で落ち着きます。
子どもの頃にレム睡眠が多めに出現することから、レム睡眠は脳の成長に重要なのではないかと、漠然と考えられてきました。
大人になっても脳が成長し続ければいいのですが、残念ながら脳の大きさのピークは、25歳頃です。その後は、年齢とともに徐々に小さくなっていきます。1日に失われるニューロンは約10万個ともいわれます。
以前は、成人になったらニューロンが減っていく一方で、新しくニューロンが生まれることはないと考えられていました。しかし現在では、大人になってもニューロンは新しく生まれてくる(神経新生)というデータも多く発表されています12〔註5〕。
成人におけるニューロン新生は、海馬で生じます。海馬は、記憶や学習機能をコントロールする、いわば「記憶の司令塔」のような存在で、日常の出来事や学習して覚えた情報はすべて海馬に送られ、一時的に保存されます。
この海馬でのニューロン新生に関わる興味深い現象が、レム睡眠中に行われていることがわかりました。海馬の情報伝達は、ニューロンの樹状突起(細胞体から出ている突起)から飛び出す「樹状突起スパイン」という、棘(とげ)の形に似た部分で行われています。
情報のメッセンジャー的役割の樹状突起スパインは、レム睡眠のときだけ形成されます。そして、樹状突起スパインを除去したり、必要な樹状突起スパインだけ残したりする、樹状突起を整理する機能も、レム睡眠中に行われていることがわかりました13。
この樹状突起スパインが新しくつくられたり、逆になくなったりするのは、脳の発達や記憶の整理強化にとって大切です。レム睡眠がこの記憶の固定プロセスに重要であることは、細胞レベルで明らかになったわけです。
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