「#MeToo」追放セレブ、その後も続く苦難の日々 無罪となったケビン・スペイシーもマイホームを失う
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 10時0分
ハリウッドはすでにアワードシーズン真っ最中。賞を狙う映画の試写案内が毎日複数送られてくる中、ある招待メールが目に留まった。
【写真を見る】裁判の渦中、顔をほぼ覆い隠して外出していたケビン・スペイシー
賞にからんできそうなタイトルは頭に入っているのだが、この『The Performance』という映画については、まるで聞いたことがない。何より、主演俳優が「#MeToo」騒動以来ほとんど姿を見かけないジェレミー・ピヴェンだということに驚いた。
あるプロデューサーの名前を冠した会社が製作したインディーズ映画で、監督はピヴェンの姉。原作である短編小説の映像化権は、人気のテレビドラマ『アントラージュ★オレたちのハリウッド』に出演中だった14年前にピヴェンが取得していたものだという。
訴訟にまでは至らなかったが…
ピヴェンは『アントラージュ』で見せたコミカルな演技でエミー賞を3度も受賞した、アメリカでは有名な俳優。テレビドラマ『セルフリッジ 英国百貨店』や、ガイ・リッチー監督の映画『ロックンローラ』などにも出演している。
だが、2017年10月の「#MeToo」勃発で、状況が一転。7人の女性が彼から受けた被害を告白し、当時主演していたCBSのドラマ『Wisdom of the Crowd』は放映中止に。ピヴェンはすべてについて否定しているが、訴訟まで発展したケースはなく、そのままになっている。
それから7年も経つ今、彼は、復帰の機会を狙っているのだろう。『The Performance』は、1930年代後半、ベルリンでヒトラーのためにパフォーマンスをすることになったユダヤ系アメリカ人ダンサーの葛藤を描く、シリアスな映画。演技とタップダンスの見せ場がたっぷりで、俳優としても美味しい役だ。
原作の映像化権を「#MeToo」のずっと前に買っていたのも(騒動の後だったら売ってもらえなかったはず)、監督できる人を姉に持っていたのも、幸運だった。
予算は非常に限られているだろうが、『アントラージュ』でアワードキャンペーンの経験がある彼は、賞の投票権を持つ人たちを対象にロサンゼルスとニューヨークで何度か上映会を組んだり、映画の視聴リンクを送ったりして、業界内で口コミが広がることに期待をかけている。
完全復活のケースは見当たらない
だが、たとえこの作品を重要な人たちに見てもらえたとしても、昔のようにメジャーネットワークやHBOからオファーが来るかというと、かなり疑問だ。「#MeToo」以後、性加害問題で追放された男性が完全にキャリアを復活させた例は、ひとつもない。複数の民事と刑事裁判すべてで無罪となったケビン・スペイシーですら、苦しんでいるのである。
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