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軍事専門家が説く、情報分析の「罠の罠」の正体 分析対象に接近すればするほど陥りやすくなる

東洋経済オンライン / 2024年11月25日 15時0分

どちらもそれなりの合理性があって、どちらが正しいかは絶対的な基準で結論できない。加えて、ことはソ連の核戦略に関わる問題ですから、「我々はこう考えています」なんて当事者が教えてくれるわけでもない。

様々な情報活動の結果、やっぱりソ連海軍は要塞戦略で動いているらしいという結論が出たのは、冷戦も終わりに近づいた1980年代のことでした。

分析対象の言い分に同調してしまう

ミラーイメージの罠を避けるためには、相手がどういう論理を持っているのかを相手の立場になって把握することが有効です。

ところが、ここにはもう一つの罠が潜んでいます。分析対象の持っている世界観とか価値判断にまで踏み込んでいくと、それに同調してしまうということが起きがちなのです。

例えば、ロシアは現在の世界についてこんな不満を持っている。イスラム過激派がテロを起こすのはこういう論理に基づいているからだ。北朝鮮の立場になってみれば核を持たないと危なくてしようがない。

こういうふうに分析対象の論理に接しているうちに、「彼らの言い分は全くもっともだ」というところに行き着いてしまう人が少なくないのです。

ロシアがウクライナ侵略を始めてから、こんな意見に何度か接しました。「西側の言い分は偏っている。ロシアの報道を見よ。全く違うことを言っているではないか」。

その通りです。

ロシアでは自国が「侵略」をやっているとは言いませんし、むしろ西側と結託してロシアを脅かすウクライナこそが悪いということになっています。実際、私がロシア人だったらそう思うのかもしれません。また、西側の全てが正しいとは私も思いません。

でも、ロシア側もやっぱり偏っているんですよね。この戦争に関してロシアから出てくる言説の中には、かなり牽強付会なものであったり、そもそもまるで虚偽であったりというものが少なくありません。

だから「西側は偏っている」と言ってロシア側の言い分を無批判に受け入れるなら、それは偏りの中心点が移っただけではないでしょうか。

もっと言えば、ウクライナも偏っているし、いわゆるグローバルサウスも偏っています。ウクライナで戦争が起きているという事態に際しての利害得失がみんな違うからです。

自分はどう偏っているのか?

神様なら、あるいはAIとか宇宙人なら、これらを完全に公平な目で見ることができるかもしれません。例えば「長期主義」という考え方があって、ここでは1000年とか1万年とかいうスパンで人類の利益を考えて物事を判断すべきだとされています。

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