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中小企業オーナーは最強のおいしい職業なのか? 自由が利く、支出は会社の経費といわれるけど…

東洋経済オンライン / 2024年11月26日 9時20分

その1店舗も赤字基調で、仕入先や銀行への支払日のたびに資金繰りに奔走する自転車操業です。パートに払う人件費がもったいないので、下野さん夫婦が週6日早朝から深夜まで働いていますが、改善の見込みはありません。

下野さん夫妻の収入は年々減っており、最近は実質ただ働きという月もあります。貯金を取り崩して生活費に充てることが増えてきて、数年前から奥様と「倒産する前に廃業しようか」と話し合っています。

ただ、会社は債務超過(資産<負債)で、銀行借入金の残高が店舗の土地など資産の価値を上回っているので、資産を処分して廃業すると借入金だけが残ります。廃業したくてもできないという、八方ふさがりの状態です。

現在の仕事や生活に対する満足度を下野さんに尋ねたところ、過去を悔やんでいました。「父から後を継ぐかどうか聞かれたとき、当時勤めていた会社の仕事で少し悩んでいたこともあって、割とすんなり引き受けました。会社員より中小企業経営者のほうが楽だと考えたのは、まったく愚かでした」。

フツウの社長は年収も普通?

持田さんのような①ウハウハ社長を見ると、中小企業経営者は「世界最強の職業」です。逆に、下野さんのような③ダメダメ社長を見ると、「この世で最も悲惨な職業」と言えそうです。

では、②フツウの社長も含めた3タイプの割合は、どうなっているのでしょうか。正確なところはもちろんわかりませんが、私の感触では、①:②:③=1弱:6:3というところです。

ちなみに、全国の法人に占める赤字法人の割合は64.8%で(国税庁「統計法人税表」)、3分の2が赤字です。②には、実際は黒字経営であるものの節税のために赤字にしているという企業が多数含まれています。

ところで、多数派を占めるのが、②フツウの社長。①ウハウハ社長や③ダメダメ社長と比べてまったく目立ちませんが、フツウの社長はどういう生活をしているのでしょうか。

まず、額面の収入は、世間の会社員と大きく変わりません。年収のレンジは、下は400万円から上は2000万円というところです。生活支出のかなりの部分を会社負担にしており(厳密には脱税ですが)、実質的な収入は平均的な会社員より少し多いかもしれません。

ただし、収入が極めて不安定なのが、問題です。中小企業は経営体力がないので、リーマンショックやコロナといった大きな出来事でなくても、ちょっとした環境変化で業績が悪化し、収入が激減します。そのためフツウの社長は、あまり豊かさを実感できていません。

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