北朝鮮「金正恩への奇妙な個人崇拝」が合理的な訳 ばかげた神話の影にある「忠誠審査」という戦略
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 10時0分
横暴に振る舞う上司、不正を繰り返す政治家、市民を抑圧する独裁者。この世界は腐敗した権力者で溢れている。
では、なぜ権力は腐敗するのだろうか。それは、悪人が権力に引き寄せられるからなのか。権力をもつと人は堕落してしまうのだろうか。あるいは、私たちは悪人に権力を与えがちなのだろうか。
今回、進化論や人類学、心理学など、さまざまな角度から権力の本質に迫る『なぜ悪人が上に立つのか:人間社会の不都合な権力構造』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
独裁者は悪行が上達する
学習は、権力を獲得し、手放さずにいるための必須の要因だ。そこから錯覚が生じる。データを分析すると、誰かが時とともにしだいに悪質になっているように見えるだろう――権力がその人を腐敗させているように。
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だがじつは、その人の悪意は変わっておらず、腕が上がっただけかもしれない。その人は、常に腐敗していた。ただ、悪行が上達しただけなのだ。
独裁者や専制君主の間では、この現象には名前がついている。「独裁支配学習(authoritarian learning)」だ。
独裁者たちがサミットを開いて、考え方を共有することがある。もしそれが学会だったなら、「抗議運動の粉砕――事例研究」といったセミナーや、「反体制派をどのように消し去るか」についてのパネルディスカッションが行われることだろう。
実世界の格別興味深い例としては、1958年に毛沢東がソヴィエト連邦の指導者ニキータ・フルシチョフをプールに迎えたときのことが挙げられる。
フルシチョフは泳げなかったので、浮き袋をつけ、両者は外交を行い、戦略を話し合った。両者の通訳は、言葉を交わす2人を追ってプール脇を行き来した。
独裁者が自ら刷新を行うこともある。独裁者は選挙で不正を働くのがうまくなる。過去には選挙の不正は主に、票を水増しするという、あまり芸のない方法で行われていた。原始的な方法だ。犯人は、捕まる可能性が高かった。
不正が行われれば、その瞬間に人々が気づくことができたし、犯人がヘマをすることもあった。露見したときには、たとえば、500人しか有権者がいない選挙区でなぜ1000票も投票されていたのかは、説明のしようがない。それはいわば未開の分野で、イノベーションの余地がたっぷりあった。
消えるインクに出生証明書の発行停止まで
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