アメリカの「宇宙政策」がマスク主導で大転換へ 揺れる同盟関係と加速する中国との競争
東洋経済オンライン / 2024年11月30日 10時30分
NASAは近年、機関全体のコストを効率化する努力の一環として、宇宙船やロケットなどのすべてを内部開発するのではなく、積極的に民間企業から商用サービスとして購入する方向性を打ち出している。そのわかりやすい例としては、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士や物資の輸送が挙げられる。
スペースシャトルが2011年に退役してから、ISSへの飛行士や物資の輸送はロシアのソユーズ宇宙船/プログレス補給船に依存する状況が長年続いていた。だが、2020年のDemo-2試験飛行ミッションで、SpaceXのCrew Dragon宇宙船による初めてのISSへの人員輸送が成功してからは、ロシアのソユーズ宇宙船とその役割を分担することが可能になった。
NASAによる民間企業を積極的に活用するアプローチは、宇宙通信から月着陸船、宇宙ステーション運営にいたるまで手を広げつつある。アメリカの宇宙機関は今後もさらに民間企業を宇宙開発に呼び込みたいと考えているはずだ。
だが、ここでマスク氏による利益相反が顔を出す。NASAによる民間企業からの商業サービス導入の成功の多くは、マスク氏が所有するSpaceXに依るところが大きい。SpaceX以外の民間企業は、NASAが新規調達案件の契約を増やそうとする中で苦戦を強いられており、すでに実績あるSpaceXと実質的な競争ができるほどにはなっていない。
また、米議会はNASAが商業サービス利用を拡大することによって、NASAの各センターへの資金配分に関する議会の影響力が低下したことに不満を持っていると言われている。議会からの風当たりがあまりに強まると、マスク氏がさらにSpaceXにばかり巨額の調達案件を持ちかけるようなNASAの改革は困難になるかもしれない。
アルテミス計画
今後のNASAにとって最大の問題は、月面有人探査や火星への有人探査を目指すアルテミス計画をどのように進めていくかだ。この計画は近年、停滞気味であることが指摘されるようになりつつある。10月には、ニュースメディア「ブルームバーグ」の創始者マイケル・ブルームバーグ氏が「1000億ドルもの予算を注ぎ込んでいるにもかかわらず、NASAの月面ミッションは行き詰まっている」と、自身のオピニオン記事で主張を展開した。
ただ、動きが鈍っているとしても、NASAがアルテミス計画を完全に中止することは考えにくい。この計画を発足させ、月面有人探査を再開することを決めたのは前トランプ政権だからだ。
ゲートウェイとスペース・ローンチ・システム
この記事に関連するニュース
-
日本が月面探査用に開発中のローバーはスターシップで月へ NASAが方針表明
sorae.jp / 2024年11月27日 10時37分
-
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
NEWSポストセブン / 2024年11月23日 7時15分
-
トランプ氏、宇宙船試験を視察 マスク氏との親密さ際立つ
共同通信 / 2024年11月20日 9時20分
-
スペースX、新型ロケット「スターシップ」第6回飛行試験を11月19日以降に実施へ
sorae.jp / 2024年11月8日 17時26分
-
NASAがアルテミス3ミッションの着陸候補地を発表 月の南極周辺に9か所
sorae.jp / 2024年11月1日 11時7分
ランキング
-
1ワークマンは「8800円ランドセル」で勝負…「過去最悪の少子化」でも異業種がランドセル市場に続々参入するワケ
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 16時15分
-
2電気・ガス料金高止まり「風呂キャンセル」「設定温度1℃」で何円変わる? “ちょっとした”節約術をご紹介【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月29日 21時59分
-
31億円売れた“宇宙服素材”布団 厚さ「3センチ」で真冬越せる性能 どう開発した?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月30日 8時10分
-
4《総フォロワー500万人のインフルエンサー》なな茶がイベント“ファンの大量ドタキャン”に怒りの告白「すべて出禁にさせていただく」「“グラビアなんかしてるから”と心無いコメントも」
NEWSポストセブン / 2024年11月30日 11時15分
-
5NY円、149円台後半=一時1カ月ぶり高値
時事通信 / 2024年11月30日 7時59分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください