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アメリカの「宇宙政策」がマスク主導で大転換へ 揺れる同盟関係と加速する中国との競争

東洋経済オンライン / 2024年11月30日 10時30分

アルテミス計画には、ISSの1/6程度の規模の多目的宇宙ステーション「月周回有人拠点(ゲートウェイ)」を建造し、それを月面及び火星探査に向けた居住拠点および物資補給の中継基地とすることが計画されている。このゲートウェイは、現在はISSが担っている、無重力環境における科学研究の場としての役割も想定されている。

ションで、月面へ宇宙飛行士を到達させる計画だが、このミッションで飛行士を月軌道へ送り届けるロケットには、NASAが2011年から約240億ドルを投じ、ボーイングとノースロップ・グラマンが開発を主導してきたスペース・ローンチ・システム(SLS)の使用が予定されている(月面着陸と帰還はSpaceXのStarship HLSを予定)。

しかしアルテミス計画は、計画スケジュールの遅延、管理上の問題、増大するコストに関する報告が継続的になされており、見直しを求める声も上がりつつある。たとえばアルテミス3号のミッションで飛行士が搭乗する予定のオリオン宇宙船は、耐熱シールドに問題が発見され、その開発スケジュールに遅れが生じている。

停滞が続くようなら、この計画には大きな手入れが加えられる可能性がある。マスク氏は完全な使い捨て型ロケットで、打ち上げにかかるコストも巨額になるSLSを、NASA肥大化の典型例だとして嫌っている。

11月12日にワシントンで行われたBeyond Earth Symposiumのパネル討論会では、トランプ新政権が進歩を加速したりコストを削減したりするために、有人宇宙飛行への取り組みを含むNASAの重要な役割に関して精査を行う可能性があるとパネリストらは述べた。またマスク氏が政権への関与を深めることにより、特にSLSとオリオン宇宙船の計画が継続されない可能性もあるとされた。

今年9月、マスク氏はSpaceXなら2年以内にStarship 5機を火星に送り込み、その4年後には有人火星ミッションを実行に移せると発言した。もし、それが可能ならばゲートウェイやSLSの必要性は薄れてしまう。ただし、マスク氏の発言に対して業界の専門家の多くは、常識的に考えて「そのスケジュールは到底実現不可能だ」との見方を示している。

マスク氏がSLSの計画を完全に中止させるのは難しいとの見方もある。SLSのプログラムは、その開発を担っているマーシャル宇宙飛行センターのあるアラバマ州をはじめ、フロリダ州、テキサス州で6万人以上の雇用を生み出しており、計画を中止するとなると各州選出の共和党議員からの強い反発が考えられるという。

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