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94歳「伝説の大道芸人」命を削って踊り続ける理由 身体が思うように動かなくても、観客は満員

東洋経済オンライン / 2024年11月30日 9時0分

――たくさんのお客さんが来ていました。55年間も大道芸を続けてきたギリヤークさんは、お客さんの前に立つとどんな気持ちに?

やっぱりプレッシャーはかかります。どれだけ長くやってきても、緊張があるんですね。「今日は大丈夫かな?」「ウケるかな?」なんて。でも、それがあるから、いい仕事ができるんじゃないかなとも思います。大道芸人っていうのは、人にもよるんでしょうけど、僕の場合は「慣れ」も「新鮮さ」も大事で、両方ないとダメなのですね。

――1週間後には新宿公演が控えています。

心配で心配で。何が心配かっていうと、(演目の)練習をできていないでしょう? トレーニング(リハビリ)は週に何回かしてるけどね。

――新宿公演を終えた後、ギリヤークさんがしたいことは何ですか?

映画(ギリヤークさんを追ったドキュメンタリー『魂の踊り』)を作ってね、やってるんだよね。この間ね、チャンバラ映画で、日本人が優勝したでしょう(真田広之が主演のドラマ『SHOGUN 将軍』。第76回エミー賞で作品賞・主演男優賞などを受賞)。そういう感じになりたいね。

この日、ギリヤークさんの黒子を2016年から務めている紀(きの)あささんも同席した。大道芸人・写真家として活動している紀さんは、公演のときだけでなく、身の回りの世話や活動のサポートもする、マネージャー的な存在である。

大道芸人の大先輩としてギリヤークさんを尊敬し、2013年に各地の公演に同行。撮影した写真集を出版するなど、長くて濃密な時間をともにしてきた。黒子をすることになったのは2016年からだという。

「2015年の夏にギリヤークさんの体調が悪くなって、2016年は一度も公演ができなかったんです。大道芸というより、もう立ち上がれないんじゃないかというほど悪化して。

でもギリヤークさんは、まだ踊りたいっていう気持ちを持っていらっしゃった。『車いすでどうですか、私は黒子の衣装で』と相談したら、ギリヤークさんが納得してくださって。そこから先は一緒に、車いすで公演をするようになりました」(紀さん)

聖地・新宿の三井55広場で見せた踊り

ギリヤークさんの魅力はどんなところだろうか。紀さんは、簡単な言葉にするとウソになりそうな気がしますが、と前置きしたうえで、「伝説」と呼ばれてメディアに多々取り上げられる存在になっても、つねに等身大で生きているところだと話す。

「身体の調子が悪くて悩んでいるときも、ご飯が美味しくてニコニコしているときも、飾らないまっすぐな方なんです」と笑顔で続けた。

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