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マタギ修行する31歳、秋田で送る「最高の移住生活」 4LDKの一軒家に1人暮らし、山で糧を得て生きる

東洋経済オンライン / 2024年12月2日 9時0分

思えば、「マタギの後継者になる」というのは自分が勝手に決めただけ。移住したての素性もよくわからない人間に、「マタギをやってみないか?」と声がかかることなど、ありえないのだ。

ちょっと考えればわかることに、岡本さんは自分の無知さをかみしめながら、もどかしい日々を過ごした。

直感で「伝説のマタギ」を探し当てた

そんな中、岡本さんは自分が住む集落に「伝説のマタギ」と呼ばれる松橋吉太郎という人がいるという話を耳にする。

その人に直接、会いに行こう! と思った。104で電話番号を調べてアポを取るとか、紹介者を探して段取りしてもらうとか、外側から固めていくのはもどかしすぎる。松橋さんの自宅を探して、懐に飛び込むのだ。そして志願しよう。マタギになりたい、と。

住所も顔も知らない松橋さんの自宅を探して、自転車で集落を回った。そして、移住して3カ月経った9月。

残暑が厳しいとある日、自宅からコワーキングスペースに向かう途中に、廃業した個人商店の前を通ると、ご老人の一団がコーヒーを飲んでいた。その中の1人を見て、直感的にこの人だ! と岡本さんは確信する。

「こんにちは。吉太郎さんですか?」

思い切って挨拶をすると、「んだよ(そうだよ)」。松橋さんは初対面の若者をいぶかしがることもなく、穏やかにうなずいた。

「マタギになりたくて移住した岡本健太郎という者です!」

「ああ、んだが(そうか)」

松橋さんはにっこりと笑った。この日をきっかけに、岡本さんは松橋さんを親方と呼ばせてもらい、自宅を日常的に訪ねていくようになった。ようやくマタギ後継者の扉が開き、修業の日々が始まるのである(修業の日々も前編にて)。

月5万円で「4LDKの豪邸」に暮らす

ここで岡本さんの“マタギマインド”な日常を紹介しよう。

結婚6年目、岡本さんは秋田、妻は東京で暮らす2拠点生活。生計を立てるのは本業のデータエンジニアの仕事である。移住を機に独立してフリーランスになった。

月曜日から金曜日の週5日間、Wi-Fiが入る無人の比立内駅直結のコワーキングスペース「がっこステーション」に通って、10時から19時まで仕事をする。

「借りた自宅にWi-Fiが入らないことに焦りましたが、この限界集落にコワーキングスペースがあることに、もっと驚きました(笑)」

自宅は、空き家だった一軒家を借りている。当然のごとく集落にアパートはなく、借りて住むならば一軒家になる。

以前は高齢女性が1人暮らししていたというこの一軒家は、なんと1階コンクリート造の木造2階建て。居宅部分の木造2階部分は4LDK、1階は倉庫のように広い。敷地内の駐車スペースも「がんばれば8台は駐車できる」という。

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