北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない
東洋経済オンライン / 2024年12月2日 6時30分
軟弱地盤に「硬い地質向き」の工法
11月18日の会議では次のようなことが示された。新函館北斗―札幌間における土木工事の全長は211.9km。そのうち全長168.9kmあるトンネル工区における掘削の進捗率は11月1日時点で80%まで達している。40あるトンネル工区のうち18工区で掘削が終了している。ここだけ見れば順調に進んでいるように見えるが、一部のトンネル工区の掘削が難航している。
まず、新函館北斗駅と新八雲(仮称)駅の間に設けられる渡島トンネル(全長32.7km)だ。7つの工区に分かれており、村山工区(5.3km)のように掘削が完了したものもあるが、台場山工区(3.5km)と南鶉工区(3.9km)の掘削が遅れている。ほかの工区の進捗率が80〜100%であるのに対し、台場山工区は41%、南鶉工区は37%にとどまる。
両工区とも掘削の方法としては、硬い地盤の掘削に適しているNATM工法が用いられているが、台場山工区は細粒砂岩などのもろい地盤、南鶉工区は水に触れると膨張するような地盤に当たってしまった。
掘ること自体はできても、地盤が硬くないのでトンネル内面にコンクリートを吹き付ける前に崩れ落ちる危険がある。安全性を確保するため、地盤が崩れ落ちないように薬液注入などによって固めるといった追加的な補強工事をしながら慎重に工事を行っているため、掘削はゆっくりとしたペースでしか進まない。
工期を決めるためには、地質不良の区間があとどのくらい続くのかを見極める必要がある。そこで、前方の地質状況を事前に把握するべく両工区で長尺ボーリング調査を始めた。それぞれ前方500mを調査する予定だったが、台場山工区では301mの時点で、南鶉工区は183mの時点で削孔ができなくなった。長尺ボーリング調査すらままならいほどの地質不良だったのだ。
そのため、今後は人工的に発生させた磁場を利用して地盤の性質を調査する空中電磁探査など別の調査方法も活用しながら調査、分析を続ける。
軟弱地盤であればシールドマシンによる工法に転換したほうがいいではないか、とJRTTの担当者に尋ねたところ、「現時点では転換までは検討していない」とのことだった。シールドマシンを使うとなると、機械の組み立てに年単位の時間がかかる。しかも巨額の追加費用が発生する。現在は「NATMで少しでも合理的、効率的な工事ができるような方法を探っている段階」という。
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