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北海道新幹線、難航する「トンネル工事」の実態 軟弱地盤や巨大岩出現、地質に工法が合わない

東洋経済オンライン / 2024年12月2日 6時30分

再び岩塊が掘削阻む「羊蹄トンネル」

長万部駅と倶知安駅の間に設けられる羊蹄トンネル(全長9.7km)は倶知安方から掘進中の比羅夫工区(5.5km)と新函館北斗方から掘進中の有島工区(4.1km)からなり、どちらもSENS工法で工事が進められている。

SENSとは円筒形のシールドマシンを使って掘削を行い、掘削が終わると同時にコンクリートでトンネル内面を覆う工法。硬い地盤を掘り進むNATM工法と軟弱地盤を掘り進むシールド工法の中間と考えればわかりやすい。しかし2021年7月、比羅夫工区で10mを超える巨大な岩塊が出現し、掘削がストップした。

硬い岩塊を掘削するとシールドマシンの刃が破損する危険がある。ルート上にこうした岩塊がほかにもあるか事前に調べる必要がある。そこで、地上から電磁波や、地盤打撃時に発生する弾性波を用いて地質を探査したところ、比羅夫工区と有島工区ルート上には9カ所で掘進に影響する可能性がある岩塊の存在が確認された。ただ、その後に9カ所を詳細に調査したところ、撤去が必要な岩盤は3カ所で、残り6カ所は「掘進が不可能というほどではない」という。

工事を妨げた巨大岩塊については、シールド機の後ろから岩盤に向かって迂回する小断面のトンネルをNATM工法で掘削し、到達後に岩塊を細かく砕いて2023年3月に迂回トンネルから除去した。その後は迂回トンネル埋め戻しなどの整備を終え、2023年11月、2年4カ月ぶりに掘削を再開した。比羅夫工区の11月時点の掘削進捗率は69%。2019年4月に着工を開始し、2024年8月の完成を目指していた。

有島工区の工期は2025年3月で、11月時点の進捗率は59%だが、今年4月にシールドマシンが約2mの岩塊が出現して停止した。掘削箇所が地表から15mしかないこともあり、地上から掘削して岩を砕いて取り除くこととした。岩塊の撤去が完了し、11月18日、7カ月ぶりに掘削を再開したが、翌19日に1m程度の大きさの新たな岩塊が出現し、またもや掘削を停止してしまった。

JRTTに問い合わせたところ、「4月に岩盤に当たったときからこの岩盤の存在を想定していた」としたうえで、「撤去用の機材は残しておいた」という。同じく地上から掘った穴をから岩を砕く工法で岩塊を取り出す。そのため、「この撤去作業があっても全体のスケジュールに変更はない」。

とはいっても、このように次々と岩盤が出現すると、ルート上に弾性波探査では発見されなかった岩塊が存在するかもしれないという懸念は付きまとう。

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