「カグラバチ」が"サイバー・松竹連合"でアニメ化へ 業界注目の人気漫画を2社が射止めた理由
東洋経済オンライン / 2024年12月2日 19時30分
一方の松竹も、アニメで稼ぐ道を模索しているさなかだ。今年1月にはTBSホールディングスとアニメの共同製作などで資本業務提携を発表。直近では、10月に公開された人気小説原作の劇場アニメ「がんばっていきまっしょい」を幹事として製作している。
大手を差し置いて2社が選ばれた理由
もっとも、「【推しの子】」の幹事はKADOKAWAが担い、サイバーエージェントの委員会に対する出資は少額にとどまる。松竹も、「ドラゴンボール」に「ワンピース」と集英社の大型タイトルを扱う東映アニメーションと、「呪術廻戦」や「僕のヒーローアカデミア」といった近年の人気ジャンプ系作品を軒並みアニメ化してきた東宝に対し、アニメ領域で大きく出遅れている。
そんな2社のペアが選ばれたのはなぜか。前出のアニメプロデューサーは「コンペではPVをつくらされるので、基本はそのクリエーティブを集英社の編集部とライツ担当者、原作者がよいと思ったということだろう」とみる。そのうえで次のように推察する。
「プラスアルファの意図があるとすれば、スタジオの分散化だ。1つのスタジオに複数の作品を任せてしまうと、その制作ラインが(負荷などの面から)崩壊したときのリスクが大きい。『呪術廻戦』のMAPPAや『SPY×FAMILY』のWIT STUDIO、『逃げ上手の若君』のCloverWorksなど、すでに主要な作品を手がけているスタジオにつくらせるよりは、別のよさげなスタジオを試してみよう、という思考が働いたのではないか」
また、カグラバチのコンペでは、海外展開プランも重要な選考ポイントとされたようだ。サイバーエージェントでアニメなどエンタメ領域を管轄する山内隆裕専務は4月、東洋経済のインタビューにおいて、「アニメイベントではないが、近い客層のイベントを企画している」と、海外におけるIP(知的財産)ビジネスの可能性について含みを持たせていた。同社が今後に向けて仕込んでいる海外関連の施策が、集英社側の目に留まった可能性もあるかもしれない。
サイバーエージェントと松竹がタッグを組むこととなった詳しいいきさつは不明だが、両者はよい意味で異なる強みを持つ。
サイバーエージェントが抱える動画配信サービス「ABEMA」は、順調にユーザー数を拡大しており、中でもアニメ視聴が相応のボリュームを占める。ネット広告代理部門の協力を取り付け、大口顧客とアニメのタイアップキャンペーンを成立させた実績もある。一方、松竹は映画館への配給機能と、グループでも20館以上の映画館を有している。
業界の勢力図を変える分岐点となるか
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