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貨物列車の「車軸折損」、本当の原因は何なのか? 不正追及の傍らで忘れ去られている技術の本質

東洋経済オンライン / 2024年12月3日 6時30分

左右の車輪を車軸に嵌め込んだものを輪軸と呼び、1対(つい)と数える。車両の種類にもよるが、車輪中央の穴の内径は概ね150~200mm程度で、その内径は嵌め込む車軸の外径より0.2~0.3mm程度小さくして締め代を設けておく。そして油圧を使ったプレス機により、車輪を車軸に強い力(30~100トン程度)で圧入する。締め代や圧入力については、日本産業規格「JIS-E 4504鉄道車両用輪軸-品質要求」で規定されている。

文章だけではイメージが湧かないと思うが、ユーチューブなどの動画サイトで「車輪圧入作業」と検索すれば、いくつかの動画がヒットする。中には西武鉄道の武蔵丘車両検修場における車輪圧入作業の一般公開を撮影したものもあり、作業員による音声の解説があるので手順がよくわかるとともに、圧入力の変化を示すチャートまで映っているので、今回問題となっている圧入力の管理について理解しやすい。

車輪は走行により摩耗したり、滑走により傷付いたりして、踏面の形状がいびつになるので、外周を正しい形状に削り直しながら使用する。一般的な電車の車輪直径は新品時860mmだが、削り直すたびに直径が減少するので、下限値780mmに達する前に車輪を交換する。その際はプレス機により圧入とは逆方向に力をかけ、車軸から車輪を抜き取る。車軸は超音波により傷の有無を調べ(人体のエコー検査と同じ)、問題なければ再使用する。

再使用する車軸は車輪が嵌まる部分を削り直す(外径は当然小さくなる)。そこに嵌める車輪は、車軸外径と理想的な締め代となるよう内径を削って調整する。このように輪軸の組立は手間のかかる繊細な作業である。また、かじり(接触した部分の圧力が高くなり熱影響によって著しい擦り傷が発生する現象)の防止も重要だ。圧入時に車輪と車軸が双方かじらないよう、嵌め合い面は滑らかに仕上げるとともに、潤滑剤を塗布して圧入する。締め代が正しいのに圧入力が過大となる場合は、かじりが発生している可能性を示している。

圧入力が過小であると、極端な場合は走行中に車輪が車軸からすっぽ抜けてしまう。筆者は鉄道模型で経験済みだが、実物の鉄道車両でそこまでひどい状況は稀である。そもそも輪軸の組立で重要なのは、車輪が車軸をしっかり把握することで、その把握力は基本的に締め代で決まる。もし把握力を簡単に測定できれば、把握力の数値で組立作業の良否を管理すべきで、それが難しいので圧入力で代用して管理してきた経緯がある。

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