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貨物列車の「車軸折損」、本当の原因は何なのか? 不正追及の傍らで忘れ去られている技術の本質

東洋経済オンライン / 2024年12月3日 6時30分

なお、今回車軸折損が発生した電気機関車EF210形341号機は製造後2年程度で、本来なら輪軸組立は機関車メーカーで実施したはずである。その作業をJR貨物の車両所で実施した理由は、機関車メーカーの設備が何らかの事情により使えなかったためらしい。

車軸折損のメカニズム

現在日本の鉄道では、車軸折損の発生は稀であるが、半世紀以上前はよく発生した。車軸は真ん中でポキッと折れるのではなく、車輪を嵌め込んだ部分で折れるのが普通である。前項での説明のように、車輪は車軸に強固に圧入されているが、車軸の表面には1回転ごとに “引っ張り”・“押し込み”の力が発生する。微視的に見ると、車輪と車軸は1回転ごとに繰り返しお互いを擦りながらごくわずかに動いている。

このような微動摩擦が続くと金属腐食が発生し、それを専門用語でフレッティング・コロージョン(略してフレコロ)と呼ぶ。車軸折損はこのフレコロが原因で発生することが多く、輪軸組立の良否と密接な関係がある。車輪の圧入力が過小であると、車軸に対する車輪の把握力が不足してフレコロを助長する。したがって輪軸は車輪が車軸をしっかり把握できるよう設計にするとともに、組立時の圧入力過小に注意を払う。

車軸折損の原因は他にもあり、材料の欠陥、表面の損傷、軸受の発熱などが原因で折れる場合もある。今回の車軸折損については、折れた箇所が公表されていないので推測の域を出ないが、圧入力の過小ではなく過大が問題視されているため、フレコロによる折損ではないと考えられる。そして車軸に最も強い力がかかるのは表面(外周部)なので、発端となる異常は車軸外周部で発生したと考えて差し支えないだろう。

今回の車軸折損は、貨物列車を先頭で牽引する電気機関車で発生した。ここまでの図解は、わかりやすさを優先して動力を持たない車両の輪軸について描いたが、電気機関車の輪軸は駆動するための主電動機(モーター)と、その回転を輪軸に伝える歯車が付いている。日本の電気機関車は、主電動機の重量の半分を車軸で支える“吊り掛け式”と呼ばれる方式である。

何をもって「安全」と判断するのか?

2024年9月10日付のJR貨物プレスリリース「輪軸組立作業における不正行為の発生について」には、その背景として「いずれの箇所においても、作業担当者は、圧入力値を下回った場合は、車輪及び大歯車の固定に不具合が生じる可能性があると認識していましたが、基準値を若干超過する分には問題が無いものと認識していました」とある。

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