朝ドラ「おむすび」をそれでも私が見続ける理由 大阪制作としてのコメディとリアリティを
東洋経済オンライン / 2024年12月3日 9時30分
朝ドラ『おむすび』の評価が上がってこない。タイトルにあるように、私は最後まで見続ける決意をしているが、そんな私でも、なかなか乗り切れないのが正直なところだ。
「反省会」が盛り上がった『ちむどんどん』(2022年)ほどではないにしても、厳しい言葉が、ネットニュースやSNSで騒がれている。
いかにも「ザ・朝ドラ」という既視感
どうして評価が芳しくないのだろう。
私が思うのは「いわゆる朝ドラ」だということだ。「国語算数理科社会オール3」、すべてが平均点で、突出するところのない感じ。
特に、ストーリーの骨格=「女の子が都会に出てきて夢を叶える」は、いかにも「ザ・朝ドラ」という既視感に溢れている。
9月30日の初回で、橋本環奈(米田結)が「なんで海に飛び込んでるっちゃろ。うちは朝ドラヒロインか」などと言っていたが、そんな「朝ドラin朝ドラ」「メタ・朝ドラ」というセンスが、全体に通底しているように感じる。
あと「糸島編」開始早々の目玉とされた「ギャル(文化)」も、正直、プラスに機能したとは言い難い。そもそもギャルを取り上げたこと、そしてギャルに「集団規律を守る、まじめでポジティブな集団」という味付けをしたこと。これらが2段階で忌避されたようにも思う。
さらにタイミングの悪影響も大きいだろう。何といっても前作が、朝ドラ史上、もっとも強度の高い脚本(妙な表現だがそう感じた)を誇る『虎に翼』だ。
そして今、昼には、こちらも評判が高かった『カムカムエヴリバディ』(2021年)、そしてNHK BSでは「朝ドラを超えた朝ドラ」『カーネーション』(2011年)の再放送。さらにこの秋は、NHKでは『3000万』『宙わたる教室』などの意欲作が並んだ。
また民放ではこの1年、TBS『不適切にもほどがある!』、フジテレビ『新宿野戦病院』と、宮藤官九郎が大活躍、ギャグ系ドラマのハードルは完全に上がりきった状態。そんな中『おむすび』はかなり追いやられているように見えてしまう。
それでも諦めきれない理由
それでも諦めきれないのは『カーネーション』や『ちりとてちん』(2007年)、『スカーレット』(2019年)に見入った「NHK大阪制作朝ドラ」ファン(私)としての性かもしれない。また「国語算数理科社会オール3」=まだ決定的な赤点を取っていないという印象もあるからだ。
諦めきれない理由として、まずは、何といっても橋本環奈の演技力である。10月21日放送、「私はお姉ちゃんみたいな生き方が嫌なの!」と、姉役の仲里依紗に対してまくし立てたシーンは、緩かったドラマの空気が、グッと止まるのを感じた。
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