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一条天皇の最期「定子と彰子」誰に想いを残したか【再配信】 死ぬ間際に読んだ和歌にある「君」は誰なのか

東洋経済オンライン / 2024年12月12日 8時0分

「露の身の 風の宿りに君を置きて 塵を出でぬる 事ぞ悲しき」

この「君」とは誰のことなのか。

行成は「成仏し切れない定子を置いて、自分だけが成仏するのは悲しい」と解釈したようだ。

一方、道長の日記『御堂関白記』では「事ぞ悲しき」のところが「ことをこそ思へ」となっており、道長は最期にそばにいたのが彰子だったことから「一条天皇は彰子を置いていくことが心残りだった」と解釈している。

「亡き定子を愛する一条天皇」をも愛した彰子自身は、どちらでもよかったのではないだろうか。彰子は、親の死を理解していない敦成親王のことが、ただただ不憫だったようだ。

親王が撫子(ナデシコ)の花を取ると、その姿から、彰子はこんな歌を詠んだ。

「見るままに 露ぞこぼるるおくれにし 心も知らぬ 撫子の花」

(いとしい我が子の姿を見るにつけても涙の露がこぼれる。後に残されたことも知らないで、撫子の花を手にした愛しい子よ)

その後、板敷を取り除いて土間とした土殿に移った彰子。素服を身にまとい、喪に服している。

【参考文献】
山本利達校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』(新潮社)
『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)
『藤原行成「権記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)
倉本一宏編『現代語訳 小右記』(吉川弘文館)
源顕兼編、伊東玉美訳『古事談』 (ちくま学芸文庫)
桑原博史解説『新潮日本古典集成〈新装版〉 無名草子』 (新潮社)
今井源衛『紫式部』(吉川弘文館)
倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書)
関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』 (朝日新書)
繁田信一『殴り合う貴族たち』(柏書房)
倉本一宏『藤原伊周・隆家』(ミネルヴァ書房)
真山知幸『偉人名言迷言事典』(笠間書院)

真山 知幸:著述家

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