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ベンツ、2635万円「ゲレンデのEV」で感じた別世界 EVの新たなベンチマークとなりうるクオリティ

東洋経済オンライン / 2024年12月12日 9時0分

そうした中でメルセデス・ベンツは、渡河走行を推奨はせずとも、メディア向け試乗会の場で渡河性能を試すシーンを用意して、G580の総合性能を強調している。

こうしたメルセデス・ベンツの技術開発の姿勢やマーケティング手法は、BEVをすでに製造販売しているメーカー、またはBEVシフトに向けて準備を進めているメーカー関係者にとっては、大きな衝撃であろう。

強大なパワーもドライバーに緊張感なく

では、オンロードでの走行どうか。走行したのはワインディング路など山間部の一般路であるため、「普段づかい」と「レジャー」を想定した走りの比較である。

G580は、加速しようとアクセルを踏み込むと、クルマ全体が「これから走り出そう」と、4輪の接地感が増す。いわば“セットアップする感じ”とでもいえる様相だ。

そこからの加速感は、3トン級の重量物がグイグイと動くという感じではなく、トルク感が十分にあるにもかかわらず、ドライバーが肩の力を入れるような緊張感はない。

力強く、かつスッキリとしてスイスイと走っていく。総じて“速い”のだが、ただ速いだけでなく、コーナーに入っても扱いやすい。ステアリングを大きく切らなくても、アクセル操作で旋回しているのがよくわかるからだ。

一方、ガソリンエンジンのAMG G63は、今回のような走行条件では、潜在能力を生かし切れない。

排気量4.0リッターのV8ツインターボ(最高出力430kW/最大トルク850Nm)は、街乗りでも扱いやすいが、本領を発揮するのは4000rpmを超えてから。そのため、コーナーリングをアクセル操作で曲がるというより、しっかりハンドルを切り込んで曲がるというイメージであり、G580とは大きく違う。

このように同じGクラスであっても、オフロードとオンロードそれぞれでBEVのG580の特異性を感じたのである。

次世代BEVの新ベンチマークになりうる

メルセデス・ベンツは2024年2月、それまで掲げてきた「市場環境が整えば、2020年代中に新規発表のモデル100%をBEV化する」という事業目標を「市場環境がまだ整っていない」として事実上、撤回している。

2010年後半からグローバルで広がった、環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資によって、いわば“BEVシフトバブル”が起こった。しかし、現在は国や地域におけるBEV関連法案の先行きに不透明感が広がったことで、「BEVシフトは踊り場にある」という意識が自動車産業界全体で一般化しているところだ。

11月上旬時点で、日本国内で発売されているメルセデス・ベンツのBEVであるEQモデルは、「EQA」「EQB」「EQE」「EQE SUV」「EQS」、そして「EQS SUV」の6モデル。

そこに新たに加わったG580 with EQ Technologyは、BEVシフトの“踊り場感”を吹き飛ばすような、次世代BEVにおける自動車産業界の中でのベンチマークだいえる。

価格はG450d Launch Editionが2110万円、AMG G63 Launch Editionが3080万円、そしてG580 with EQ Technology Edition 1が2635万円。ディーゼルモデルとAMGモデルのちょうど中間となる価格も、実に戦略的だ。

【写真】さらにラグジュアリーになったインテリアにも注目!G580 with EQ Technologyの姿を見る(40枚以上)

桃田 健史:ジャーナリスト

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