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トランプ政権再登場で気をもむフィリピンの本音 南シナ海領有権や米比同盟は鉄壁のままか

東洋経済オンライン / 2024年12月14日 9時0分

アユンギンとは、フィリピン国軍が元アメリカ軍艦だった老朽船を意図的に座礁させて実効支配の拠点としている岩礁だ。駐留するフィリピン海兵隊員に食糧などを補給する活動を中国艦船がたびたび妨害しており、まさに紛争の最前線である。

パラワン島を初めて訪れたアメリカ政府高官は、大統領選でトランプ氏に敗れたハリス副大統領だった。

2022年11月22日、日本が政府開発援助(ODA)で供与したフィリピン沿岸警備隊(PCG)の艦船に乗船し「アメリカは南シナ海における示威や威嚇に対し、航行の自由や国家主権を守るため同盟国としてフィリピンと共に立ち上がる」と宣言していた。

オースティン氏の訪比は就任以来4度目だった。アメリカ国防長官が東南アジアの国をこれだけの頻度で訪れるのは異例だ。

パラワン訪問に先立つ11月18日には、マニラ首都圏の国防省本部でテオドロ国防相と「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」に署名した。両国間で機密軍事情報を共有化する枠組みだ。

オースティン氏は会見でトランプ次期政権での比米同盟への見通しについて聞かれ、「民主、共和両党ともにフィリピンを強く支持している。同盟の強さは政権を超えて続くだろう」と話した。

両国政府には第2次トランプ政権が発足する前に、安全保障面を中心に現行の枠組みを固め、既成事実化しておきたい思惑がある。

マルコス氏の前任のドゥテルテ前大統領は歴代政権の伝統的な親米路線を転換し、その前任のアキノ政権が提訴した南シナ海の領有権をめぐる仲裁裁判で2016年7月、中国の主張を退ける裁定が出たにもかかわらず、これを棚上げして中国に接近した。

政権交代前に固めたい安保の枠組み

ドゥテルテ前政権の継承を唱って2022年の大統領選で圧勝したマルコス氏は、外交・安全保障政策でも前政権の親中路線を引き継ぐとみられていたが、バイデン氏の積極的な働きかけもあって就任後、親米路線に大きく舵を切った。

南シナ海の領有権争いで中国に一歩も引かない姿勢を示す一方で、EDCAに基づきアメリカ軍が使用できる国内の拠点を5カ所から9カ所に増やした。

バイデン氏らアメリカの政権高官も「米比同盟は鉄壁だ」と繰り返してきた。アメリカ軍は2024年4月の合同演習の際、フィリピン北部に中距離ミサイル発射システムを持ち込み、そのまま撤去させずに中国ににらみを利かせている。

同年7月30日にマニラ首都圏で催された両国の外務・防衛閣僚会合(2プラス2)でアメリカ側は比国軍と比沿岸警備隊の近代化支援に「前例のない規模」(オースティン氏)の追加支援をすると発表した。

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