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トランプ政権再登場で気をもむフィリピンの本音 南シナ海領有権や米比同盟は鉄壁のままか

東洋経済オンライン / 2024年12月14日 9時0分

経済面でも、アメリカは日本政府とともに「ルソン経済回廊構想」を打ち出し、多面的な援助、支援を約束してきた。

アメリカを中心とするアジアの安全保障はこれまで、アメリカと日韓豪フィリピンなどの同盟国が2国間で直接につながるハブ・アンド・スポーク型だったが、バイデン政権は、アメリカと複数の同盟国が連携する「格子状」の関係をめざすようになった。

日米豪印の「QUAD」や米英豪の「AUKUS」のほか、米日韓や米日比といった枠組みがそれにあたる。いずれも対中国を見据えての連携だが、トランプ次期政権が「格子状」を維持するかといえば疑わしい。

2国間のディールを好むトランプ氏は経済や貿易面に限らず、安全保障面でも2国間交渉を優先させる可能性がある。

第1次トランプ政権は関税引き上げなどで中国への強硬姿勢を示し、バイデン政権もそれを引き継いでいる。

トランプ氏は次期国務長官にはマルコ・ルビオ上院議員、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にマイク・ウォルツ下院議員を指名すると報じられている。いずれも対中強硬派として知られる議員だ。

このため南シナ海で中国と厳しく対立するフィリピンには今以上に肩入れするのではないかとの希望的観測がフィリピン側にはあり、与党や外交関係者らのトランプ歓迎発言につながっている。

同盟にも南シナ海にも無関心なトランプ

しかし第1期トランプ政権で南シナ海における中国の権益を公式に否定したのは、ポンペオ国務長官(当時)が2020年7月、南シナ海の大半を領有するという中国の主張を「完全な違法」と断じ、オランダ・ハーグの仲裁裁判所の裁定を支持したのが初めてだった。

すでに政権も末期を迎えていた。トランプ氏自身は南シナ海問題についてほとんど語っていない。ドゥテルテ前政権の親中路線を批判することもなかった。

ドゥテルテ前大統領は2020年3月、訪問アメリカ軍地位協定(VFA)の破棄をアメリカに通告した。同年1月、ドゥテルテ氏肝いりの「麻薬撲滅戦争」の陣頭指揮を執ってきた元国家警察長官のデラロサ上院議員へのビザ発給をアメリカ政府が拒否したことに怒った挙句だった。

トランプ氏はこの時、VFAが破棄されたとしても「正直に言えば、そんなに気にしていない」と記者団に答えている。

1998年に結ばれたVFAは、1951年の比米相互防衛条約(MDT)、2014年に締結したEDCAと並んで両国同盟関係の支柱だ。VFAが失効すれば、アメリカの艦船の寄港や軍人の滞在が難しくなり、同盟維持に欠かせない合同軍事演習が事実上不可能になる。

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