ドゥカティ「ムルティストラーダV4S」王者の貫禄 快適な冒険を求める大人のアドベンチャーバイク
東洋経済オンライン / 2024年12月15日 14時0分
V4エンジンの加速は強烈だが鼓動はV2と比べるとキメ細かく、パワーデリバリーはいたって滑らかで扱いやすい。低回転域でも途切れないV4エンジン特有のフラットトルクで、次々に現れるタイトコーナーもギアを落とすことなく力強く登っていく。ハンドリングも秀逸。軽快さの中に大径19インチホイールらしい安定感があり、狙ったラインをきれいに描ける正確さはドゥカティならではだ。
ライディングモードによってバイクのキャラクターがガラっと変わるのも従来どおり。市街地ではエンジン特性が穏やかでサスペンションも柔らかめの「アーバン」モードでまったりと走っていたが、山へ向かって次第に曲がりくねった峠道に入り「スポーツ」モードに切り替えると、アクセルのレスポンスが一段と鋭くなりエンジンパワーが盛り上がる。電子制御サスペンションによって車高が上がって減衰力も強くなり、さながらスポーツバイクへと変身するのだ。それも一瞬で。また、ACCやBDS、新たに追加された前方衝突警報などのアシスタンス機能も使ってみたが、とりわけ長距離ツーリングや悪天候時には頼りになるはずだ。
当日は生憎の雨天だったが、かえって新型の実力が光った。スイッチひとつで「ウェット」モードに切り替えると、出力特性が穏やかになりコーナリングABSやトラコンも最適化されるだけでなく、驚くことにサスペンションも低ミュー路面でのグリップを優先した「ウェット」専用の設定へと自動調整される。欧州の滑りやすい路面のはずなのにタイヤが吸い付くような安心感だ。
ブレーキも進化していた。新たにリアブレーキ操作だけでも前後に最適な制動力を配分される機能が付いて、けっこうなペースで走っていてもほぼリアブレーキだけで間に合ってしまう。変な話、土砂降りの中でラフにアクセルを開けても急ブレーキをかけても、なかなか破綻してくれないのだ。4輪に例えるならハイメカ満載の高級SUVといった感じかも。「そんなバイク任せは望んでいない」という人もご安心を。こうしたサポート機能は手元のスイッチで最低限にすることもできる。自分でバイクを操る楽しさを奪われることはないのだ。
快適で安全な旅をスタイリッシュに楽しみたい大人へ
続いて林道にもトライ。オプションのクロススポークホイールにデュアルパーパスタイヤ(ピレリ・スコーピオンラリーSTR)を装備したダート仕様に乗り換えてトライした。さすがに1200ccの排気量とフル装備で250kg近い車重にビビりながらスロットルを開けていく。
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