「平気で人を害する人」が感じている相手との距離 4つの「心理的距離」が他人への見方を変える
東洋経済オンライン / 2024年12月17日 11時0分
では、人は意図的に自分の道徳的な輪を拡げられるだろうか? 道徳のタマネギを育てることができるだろうか?
私たちが誰かを心の中でどう考えたり思い描いたりするか次第で、その人あるいは人々に対する見方がガラッと変わることがありうる。
一例を挙げよう。アメリカ人はイラン人を敵と思うことが多い。だが、アメリカのキリスト教徒は、迫害されているイランのキリスト教徒に連帯感を抱くかもしれない。
ハリウッド映画に見られる心理的距離の感覚
ハリウッドの映画監督は、私たちの心理的距離の感覚を操作して見方を変えさせる力を、昔から理解していた。登場人物が画面上で亡くなると、私たちは、その人についてほとんどわかっていないときには、あまり反応しないことになっている。誰だかわからない人には、私たちは心を動かされないのだ。
戦争の場面で薙(な)ぎ倒される、誰とも知れない人々は、たいていの人にはごく限られた影響しか与えない。彼らにもきっと家族がいて、夢があったのだろうことは、暗黙のうちに承知してはいても、だ。
私たちは、知らない人のことは眼中にない。だが、主人公――私たちが理解していると思っている登場人物、声援を送っていたり、自分を重ね合わせていたりする登場人物――が亡くなると、映画では涙を誘う場面となる。
その効果はあまりに強力なので、たとえば子鹿のバンビの母親が死ぬと、アクション映画で、名もない登場人物のほぼすべてが画面上で亡くなったときよりも、私たちは胸が痛む。
具体性は重要だ。人は、「コンピューターオタク」全般については、毎週月曜日にオフィスに手作りのパンを持ってくるIT業界出身のバイオリニストのヴァネッサについてとは、違う見方をしているかもしれない。
あるいは、「移民」については、自分が勤める会社のフットボールチームに所属している移民第1世代のホセについてとは、違う見方をしているかもしれない(じつは、移民に強く反対している場所ほど移民が少ないことを、一貫して証拠が示している)。
私たちは、ある人に出会う回数が増えるほど、その人はただのカテゴリーではなくなっていく。人々の性格と内面生活の層を、外側から剝がしていくにつれて、彼らは私たちの社会的・心理的タマネギの核心に近づく。そして、その逆も正しい。
誰かが抽象概念にとどまっていたら、平気でその人を気にしないでいられる。それがわかれば、善い目的でも悪い目的でも使える青写真が手に入る。
「心理的距離」の4つの尺度
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