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サントリーは欧州風?「同族経営」にこだわる理由 新社長の鳥井信宏氏に期待されることとは

東洋経済オンライン / 2024年12月17日 8時30分

(撮影:梅谷秀司)

「大きな声の2人と話をするうちに、私の声も大きくなってきました。これからも発声練習に励もうと思っています」

来年3月末にサントリーホールディングス(HD)新社長に昇格する鳥井信宏氏(現副社長、58=以下、信宏氏)は、12月12日の発表記者会見で含みのあるユーモアを口にした。

大きな声の2人とは、取締役会議長としてグループの企業統治に専念する佐治信忠氏(現会長、79)と、同じく代表権のある会長として、主に海外を担当する新浪剛史氏(現社長、65)である。信宏氏は国内を中心に見る。

「父親」を彷彿とさせる信宏氏

2人に比べれば、信宏氏はおっとりとした感じである。その雰囲気は父で3代目社長だった鳥井信一郎氏と似ている。

会見での新浪氏と信宏氏のやり取りを聞きながら、信一郎社長に大阪でインタビューしたときの光景を思い浮かべた。筆者が質問すると担当の役員が応じ、どの役員も「社長、これでよろしいでしょうか」と発言内容を確認した。信一郎氏は「うん」と一言だけ答えた。信一郎氏は強いリーダーシップを発揮し、発泡酒市場を切り開いたが、威張るところもなく高圧的でもない。聞き上手な人だった。

新浪氏も信宏氏の人柄について「粘り強い、人の話をよく聞く、決めたらすぐにやる、人情の機微に触れるのが上手」と評している。

記者会見での新浪氏と信宏氏のやり取りを見ていると、まるでボケとツッコミのようだった。

新浪氏の舌禍事件(45歳定年など)でサントリーブランドが揺れたことについて、「意図せずご迷惑をかけましたが、今回のトップ人事とは関係ない」と新浪氏は語り、「ノブ(信宏氏の愛称)が優しい言葉をかけて励ましてくれました。嬉しかった」と付け加えた。

すると、信宏氏が「現場は謝らないといけなかったので大変でした」とツッコミを入れる。話し方からすれば、大きな声で持論を語る新浪氏こそツッコミ担当のように見えるが、信宏氏は「これからはツッコませていただきますから」と言いたげだった。

信宏氏は、新浪氏が長所として褒めた「粘り強い」性格を自ら否定した。「私の短所は、しつこさが足りないところだ。まだまだ佐治会長のしつこさに追いついていない」。

「粘り強さ」と「しつこさ」

しつこさは、サントリーの伝統でもある。その最たる例がビール事業だ。45年間の赤字を覆して今も挑戦し続けている。

創業者の鳥井信治郎氏が一度諦めた事業に2代目社長の佐治敬三氏が再挑戦。そのとき、鳥井信治郎氏が佐治敬三氏にかけた言葉が、今やサントリーの創業精神となった「やってみなはれ」である。失敗をおそれることなく、新しい価値の創造をめざし、挑み続ける精神と行動を意味している。

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