「M-1エリート」時代の幕開け?新たな伝説に期待 20回目のM-1 令和ロマンが史上初の2連覇に挑む
東洋経済オンライン / 2024年12月18日 13時0分
そして出たアイデアが、「若手の漫才コンテスト」の開催だった。だが似たようなコンテストはすでにある。そこで紳助が提案したのが、「優勝賞金1000万円」だった。当時、有名な漫才の賞でも賞金は50万円という時代。1000万円がいかに破格だったかがわかるだろう(同書)。
こうして、『M-1グランプリ』が誕生する。第1回の決勝は2001年12月25日。テレビ朝日系で生放送された。優勝は中川家。ここから現在の隆盛に至る道のりが始まった。
実は島田紳助には、漫才復興のほかにもうひとつの狙いがあった。それは、M-1を機に若手芸人に見切りをつけさせることである。M-1誕生の記者発表の場で紳助は、「今も、才能がないのに漫才を続けてるやつがいます。M-1はそんなやつらがやめるきっかけになると思います」(同書)。
厳しい言葉だが、一種の親心であると同時に、それだけM-1は"真剣勝負"であることを強調したかったのだろう。それまで漫才は、息抜きのための娯楽を提供するものという考えが強かった。それに対しM-1は、「誰が日本一面白いのか」を決める真剣勝負の場。いまは当たり前に思っているが、その点がまず新鮮だった。「M-1」がその頃流行していた格闘技の大会である「K-1」から来ているのもその表れだ。
"新しい漫才"の競演の場となったM-1
ただ、実際にはM-1は見切りをつける場にはならなかった。真剣勝負であることに変わりはないが、優勝を目指して何度も挑戦するものになった。それだけ芸人という職業は、若者にとって魅力的なものになっていた。
では優勝するためにはどうするか? 自分たちだけの武器を身につけることだ。その結果、M-1は"新しい漫才"の競演の場になっていく。
決勝の常連で2010年に悲願の優勝を果たした笑い飯は、ボケとツッコミがくるくる入れ替わる「ダブルボケ」のスタイル。哲夫と西田のコンビネーションも抜群で、島田紳助は2009年に披露された「鳥人」というネタに史上初の満点となる100点をつけた。
2008年に敗者復活から勝ち上がり準優勝したオードリーは、「ズレ漫才」。若林と春日が、時間差でツッコむなどあえて間を外して掛け合いをする。春日の独特の風貌とキャラクターも相まって、それまでにないスタイルとして高評価を受けた。
ほかにも「ヤホー漫才」のナイツ、「ボケを否定しないツッコミ」の南海キャンディーズ、「ノリツッコまない漫才」のぺこぱなど、ボケとツッコミのパターンにアイデアを盛り込んだコンビは多い。
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