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斎藤知事「告発文書」への対応はやはり問題だ 「パワハラ確認できず」の結論で収束じゃない

東洋経済オンライン / 2024年12月19日 11時0分

通報の濫用を防ぐために設けられた同法2条では、通報が「不正の目的」であるための要件について、「不正の利益を得る目的」「他人に損害を加える目的」などと定める。だが、文言が抽象的で解釈に幅がある。

法を所管する消費者庁参事官(公益通報・協働担当)室に尋ねると、「個別の案件には答えられない」とし、「不正の目的とは、公序良俗に反しない目的」としか説明してくれない。あいまいさは払拭されない。

おりしも今年5月に、消費者庁が法改正を目指すために設置した有識者検討会「公益通報者保護制度検討会」で議論が始まっている。第2回会議に事務局から提出されたのが、「公益通報者保護制度に関する近時の裁判例」と題する過去の判例だ。

ある宗教法人の不動産が不当に安く売却されたとして理事らに通報した2人の幹部職員が、懲戒解雇や降格、減給処分を受けた。宗教法人側は、告発した幹部職員が多数派を形成して人事を一新することをもくろんだ「不正な目的」の通報だと主張した。

だが、裁判所は、通報内容には真実と信じるに足りる相当の理由があり、人心一新することで是正しようとしたことは、「不正な目的とはいえない」として幹部職員の懲戒処分を無効と判断している。

消費者庁が第4回会合に提出した別の「『不正の目的でないこと』の要件に関する整理」という資料もある。「事業者に対する反感などの公益を図る目的以外の目的が併存しているというだけでは『不正の目的』であるとはいえない」と結論付けている。

片山氏が指摘した「クーデター」も反感や不満の表れだ。武力計画でもない限り不正にはつながらないようだ。つまり、「不正な目的」とは、「誰の目から見ても法目的に適合しないような」(第4回検討会での発言)特殊なケースを想定しているのだ。

筆者自身も調査報道の取材で何十人もの告発者と接した経験がある。それぞれの動機はさまざまだ。上司に対する怨恨や不満、さらには組織内の権力闘争もある。純粋な正義感からの告発はむしろ少数だ。だが、動機よりも大切なのは、告発内容が事実であるかの裏付け取材ができるかにかかっている。

告発者が匿名の場合は、ほとんど記事にすることはできない。接触できても、さらなる協力者を探さないと十分な裏付けにつながらなかったり、相手に否定され、それを覆しても書くだけの材料がなかったりする場合がある。何度も告発者と面会しながらも、お蔵入りになった事件は少なくない。全告発者のうち報道に漕ぎつけられるのは1~2割ほどだった。

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