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日大の裏面史から描く「悪党」たちの出世物語 ラスボスたちが集った「ちゃんこ屋ノワール」 

東洋経済オンライン / 2024年12月24日 10時30分

日本大学の林真理子理事長。田中英壽・前理事長体制からの刷新を進めているが、新体制の監事が「ちゃんこ料理たなか」に20回通っていたことが判明している(撮影:今井康一)

田中英壽理事長体制での一連の事件を経て、2022年7月、作家・林真理子氏を理事長に迎えた日本大学。改革が進むかにみえた新体制だったが、アメフト部薬物事件、重量挙部・陸上部・スケート部における「被害額約1億1500万円超」もの金銭不祥事などが立て続けに起こっている。このほど上梓された『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』では、いま話題の『地面師』著者でもある大宅賞作家の森功氏が、累計120万人以上の卒業生を送り出した戦後の「日大」裏面史を掘り下げながら、その原因を探っている。日本最大のマンモス私大でいま何が起こっているのだろうか。本書を、ノンフィクションを愛してやまないurbansea氏が読み解く。

魑魅魍魎うごめく「魔窟」

「ドラゴンクエスト」の世界では、ラスボスを倒すと闇の支配は終わり、世界は光を取り戻してモンスターたちは消え去る。日本大学の場合はどうか? 悪の首領が脱税の容疑で逮捕されるも、アメフト部の薬物事件に見るように、大学の腐敗と混迷は終わることはなかった。

【写真】田中英壽・元日本大学理事長の妻・優子氏が女将をつとめた「ちゃんこ料理たなか」(いずれも故人)。現在は閉店している(撮影:今井康一)

まさに「魔窟」である。

ノンフィクション作家・森功の最新作『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』は、タイトルが示す通り、法律学校として誕生した日大が、戦後、マンモス大学に発展し、不祥事にまみれた今日までを書いたものだ。

著者の森はこれまでに、Netflix「地面師たち」のモデルとなる人物を追った『地面師』や、『バブルの王様』(トランプタワーを買い占めた男・森下安道や地上げの帝王・早坂太吉etc)、『泥のカネ』(裏金王・水谷功や伝説の談合屋・平島栄etc)、『許永中 日本の闇を背負い続けた男』など、日本社会の裏でうごめく魑魅魍魎を活写するノンフィクションを多数発表している。

その森をして「魔窟」と呼ぶのが日大だ。そして16学部86学科の大学にあまたの系列高校や付属病院、120万人ものOBを抱える日大に巣食う首領が田中英壽(2024年死去)であった。

田中はもともと相撲部の監督として知られる人物であったが、2008年に大学の理事長に就任すると、六代目山口組や住吉会のトップと一緒に撮られたとされる写真が出回るなど、黒い噂の耐えない人物となっていった。この大物ヤクザと撮られたとされる写真は、田中の裏社会とのつながりを示すだけでなく、日大利権の大きさ、それを理事長として牛耳る田中の絶対権力を表していよう。

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