1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「伝説のバンドマン」意外すぎる"もう1つの職業" 歌舞伎町に現れた「ド派手なピンクの生物」の正体

東洋経済オンライン / 2024年12月26日 9時0分

KENZIさんの経営するバーには、数十体のぬいぐるみが置かれている。理由は、自身が好きなこともそうだが、ぬいぐるみがあることで客が、特に女性が目に見えてリラックスするからだという。

初めてお店に来て、緊張した様子の人でも、ぬいぐるみを抱きながら、表情がほぐれていくさまを何度も目の当たりにしてきた。同じような力を持っているぴぱんくぅが、街に飛び出すことで、人々に癒やしを与えていきたいのだと展望を語る。

全国の老人ホームや保育園を回りたい

野望は歌舞伎町だけにとどまらない。かつてミュージシャンとして、ボランティアで老人ホームに行っていたことがある。そのときの経験が忘れられず、今度はぴぱんくぅとして、全国の老人ホームや保育園などを回りたいのだとKENZIさん。

「おじいちゃんやおばあちゃんは、童謡を聞きたい人が多いんですよね。老人ホームで『海は広いな(童謡『うみ』)』を歌ったら、泣いていた方もいたんです。手書きの賞状もくださって、すごくうれしかった。今後は老人ホームもそうですし、保育園や公園で子どもたちにおやつを配りたい。全国のお祭りや商店街のイベントにも行かせてもらって、町おこしもしていきたいです」

その思いは本物で、全国を回るために「ぴぱんくぅ号」も購入したほどだ。メロン色の車体に、ぴぱんくぅの顔と名前がプリントされた、ド派手なワゴンである。かつては年間150本のライブで全国を回っていたが、今度はぴぱんくぅで回りたいのだと意気込む。

ミュージシャンとして伝説、カリスマとまで呼ばれた男が、今度は着ぐるみとして日本中に乗り込もうとしている。いったい、何が彼をここまで駆り立てているのだろう? 尋ねると、KENZIさんは少年のような笑顔を見せた。

「僕、インディーズ魂が好きなんです。お金持ちになるよりも、好きなことをして、ギリギリでもご飯を食えているほうがいい。ぴぱんくぅになったのも、もともと変身願望があったし、誰かのためというより、僕が遊ばせてもらっているんですよね。しかも、ロッカーって反社会的で不良じゃないですか。バンドマンのKENZIもハチャメチャだけど、そんなやつがゴミ拾いをしてるのって面白くないですか?」

夜の歌舞伎町が、どこか優しい雰囲気になる

KENZIさんの好きなキャラクターの1つに、「快獣ブースカ」がある。ブースカは怪獣ではあるものの、心優しい性格で、人間とも仲がいい(そのため表記は「快獣」)。そんなブースカのように、ステージ上ではモンスターになるが、お年寄りや子どもを大事にし、夢や童心を持ち続けているのがKENZIさんなのだ。

ぴぱんくぅのゴミ拾いの日。活動が終わり、夜の歌舞伎町から、ピンク色の後ろ姿が遠ざかっていく。人々は着ぐるみに注いでいた視線を戻し、再び歩き出したり、スマホをいじったりと、思い思いの行動を取る。

ぴぱんくぅが現れる前と何ひとつ変わらない風景に見えるが、街の雰囲気はどこか優しい。それはまるで、好きなキャラクターが登場するテレビにかじりついて見て、すっかり満足して笑みを浮かべた子どもたちの姿に重なって見えた。

肥沼 和之:フリーライター・ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください