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国家を束ねる「正統性」を失った各国指導者たち 4分の1が過ぎる21世紀、国家を束ねる指導者が消えた

東洋経済オンライン / 2024年12月28日 8時0分

アメリカをもってしても、いまや西欧的価値体系を納得する形で信頼させる正統なる力がなくなっているからである。

人類の第4段階

レバノン出身の作家・ジャーナリストであるアミン・マアルーフ(1949年~)は、『世界の混乱』(小野正嗣訳、ちくま学芸文庫)の中で、高名な歴史学者アーノルド・トインビー(1889~1975年)を引用しながら、人類は第4段階に進んだのだと述べている。

トインビーによる第1段階は、人類が素朴な発展をしていた時代で、世界はある意味低いレベルでどこもよく似ていた時代であり、第2段階は15世紀くらいから始まる発展にともなって、逆に独自の異彩を放つ民族的文化の発展がとげられた時代だ。

第3段階は18世紀以降西欧が牽引し、西欧的な価値規範、すなわち近代化に収斂していった時代であるという。

マアルーフは、その後の第4の段階が出現しているという。それは、さらに西欧が価値規範の中心でなくなり、混乱と驚愕の時代だというのだ。21世紀の現在われわれは、この第4段階の文明の段階に入ったのだというのである。

もちろん、この発展段階論はあまりにも単純な枠組みである。だが、戦後80年が経とうとし、今われわれがまったく新しい混乱の時代を迎えていることはまちがっていない。それを解釈する1つの方法ともいえる。

東西対決は、大戦争を引き起こし、大混乱を引き起こすかもしれない。それを避ける方法はあるのか。

マアルーフは、その例として19世紀から現在に至る100年以上にわたるアラブ諸国の混乱の問題をあげている。オスマントルコ帝国の崩壊とともに、東の世界であるアラブ諸国は大混乱の時代を迎える。帝国の崩壊は、正統性の崩壊だったというのである。

アラブ諸国・混乱の100年

ものごとが秩序立てられるには、その秩序をつくりあげている価値規範に正統性が付与されねばならない。正統性は、金や、権力や、名声などによって決まるものではなく、にじみ出る信頼によって決まるものだという。

「正統性というもののおかげで、集団および個々人は過度の制約を感じることなく制度的な権威を受け入れるようになります――。権威は人格化され、共有された諸価値を保持する存在とみなされるのです」(前掲書、97ページ)

17世紀から19世紀にかけてのヨーロッパの絶対王政は、その正統性を失い、人民主権という正統性がその座につくのだが、そこにはその正統性をめぐる一筋縄にはいかない問題があったわけだ。    

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